幸せの終わり

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* 次の日、オレは盛大に風邪を引いてしまっていた。 理由は明白、薄着で極寒の中長時間彷徨い歩いたからだ。 二人が来るかもと思うと中々家に戻れなくて、2時間ぐらい外にいた。 帰宅する頃にはガタガタ震えるぐらい寒くて、頭も痛くて、食欲もなくて夕飯も食べていない。 早めに寝ようと思っても、あの光景が目に焼き付いていて、目を閉じる度に思い出してしまい、寝られなかった。 正直、めちゃくちゃショックだったのだろう。 「その状態で学校行くの?辛かったら休みなさいよ」 「…大丈夫、もし無理そうなら早退するし」 登校の準備をしていると母さんが心配そうに額に手を当ててきた。 「結構熱いけど、無理しないようにね」 「うん…いってきます」 ぼーっとしながら答える。 今朝は少し早い時間に家を出た。 いつもの時間だときっと皇と顔を合わせてしまうから。 玄関からそっと隣を伺い、皇が出てくる様子がないことを確認してそそくさと駅を目指す。 本当は休もうと思った。 でも家でじっとしていても昨日のことを思い出すだけだろうし、家に二人がお見舞いに来るかもしれない。 それは避けたかった。 どう話をすればいいのか分からないし、自分が二人に何を聞きたいのかも分からない。 それにどんな答えがあったとしても、このモヤモヤが消えることはないのだろう。 それなら学校に行って、クラスメイトの目がある内ならいつも通りに振る舞える気がするのだ。 駅について相変わらずの満員電車に揺られながら考える。 皇と春太は付き合っているのだろうか。 そりゃあんなことしてるし、付き合ってるんだろうな。 言ってくれてもいいじゃないか。別に反対しないし。お祝いするし。 それともオレに知られたくなかったのかな…。 じゃあなんで三人で住もうって言ったんだよ。 …オレに気を遣ってたのかな。 オレが二人しか友達がいないから、本当は二人で暮らしたかったのにそうなると仲間外れになるから。 優しい二人なら、そんな考えになりそうだ。 …やばい泣きそうになってきた。 体調不良も相まって浮かんでくるのはそんなネガティブなことばかりで。 潤む視界を必死に乾かそうと瞬きを繰り返した。 「おはよう…」 「おー小鳥遊おは〜珍しいな一人で登校なんて」 よろよろと自席につくと、既に来ていた落合に声をかけられる。 「うん、ちょっと…」 「?なんか顔赤くないかお前?風邪?」 「うん…」 力なく答え、そのまま机に突っ伏す。 「お願いなんだけど、授業始まったら起こしてくれ…」 「お、おう…いいけどよ」 そういうのは芹沢に頼んだほうがいいんじゃないか?という落合の呟きを耳にしながら、俺は目を閉じた。 クラスの騒めきが他のことを考えないようにするのに丁度よかった。 「小鳥遊〜おーい」 「へ…」 軽く身体を揺すられ目を開ける。 どうやらガチ寝してしまっていたようだ。 一瞬ここがどこかわからなくて困惑した。 「一限目先生休みで自習だって〜それとヨダレ出てんぞ」 「あ…そうなんだ。起こしてくれてありがと」 落合に指摘され涎を袖で拭う。 後ろからガタッと音が聞こえて、皇も来ていることに気付いた。 見なくてもわかる、こちらに痛いほど向けられる視線にうっとなる。 「それよりお前大丈夫?具合悪いんだろ?」 「うん…大丈夫かと思ったけど保健室行ってくる」 「そうしろそうしろ」 来た時より身体が熱い。 悪寒もすごいし、多分熱が出ているのだろう。 「芹沢に付き添ってもらえば?」 落合の親切にドキりとした。 変に緊張して、皇のほうを見れない。 「だ、大丈夫っ…皇も大丈夫だから」 振り返ったが皇の顔は見れなかった。 絶対変な空気になってる。 しんどい。 「っじゃあ…」 逃げるように教室を出た。 途中春太と目が合ったけど、すぐに逸らしてしまった。
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