事件現場

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事件現場

「そろそろ晴ちゃん出てきてもいいんじゃないかな」  隠れるときはとことん隠れるからね、この種族。康彦くんは、買ってきたものを片付けていて台所方面で忙しそうだ。私は、その間に手を洗ってしまおうと洗面所に向かう。 「わーっ、ちょっと大変! 康彦くーん!」  なんと洗濯機の前が惨劇の場に! 「どした、晴ちゃんいた? ──わーっ!」  康彦くんは、半笑いで私に合わせ驚いてくれた。  お風呂、洗濯機、洗面、トイレと続く水周りルーム。その洗濯機の前になんと、『(わりと値の張る)猫様用フリーズドライ』が無残な姿で遺棄されていた。  私がその袋を震える手で拾い上げると、康彦くんが覗き見て言った。 「すごいな……」  そう、その凄惨な姿は、全身を鋭い犬歯のようなもので穴だらけにされた、無残な姿だった。  真空のチャックはそのままに、穴から中身がでることもなく、噛み潰されたようになっていた。 「いったい誰が……」  ポツリつぶやく私は、康彦くんの目を見た。彼は、私から目をそらし、私の奥へと目をやった。そして、 「──晴」彼が言うと、 『にゃぁ』──晴?  我が家では仕切りとなるドアはフルオープンで過ごしているため、猫様はどこでも出入り自由だ。  私は袋を片手に振り返る。そこに晴は居た。  開け放たれたトイレのドアと壁に挟まれるようにして、見つかるのを待つかの如くそこに居た。 「晴ちゃん、どしたの〜こんなとこに隠れて〜」  ふいに見つけた猫様を私は撫で回す。晴は私の片手が気になるようだ。しきりに匂いを嗅いでくる。それを見ていた康彦くんが、 「それはもうダメだよ。ご臨終だ。いつやられたのかも分からないし」  遺棄されていた袋を寄越せと右手を私に差しだし、損な役回りを引き受けてくれた──。
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