刑事と死神は路地裏でタッグを組む

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刑事と死神は路地裏でタッグを組む

「くたばりやがれ!」  俺は突っ込んできた若者のナイフを警棒で叩き落すと、股間を蹴り上げた。 「――△☓◇っ!」  体を丸めて悶絶している若者を尻目に、俺は一歩前に出るとリーダー格を睨み付けた。 「これ以上おいたをすると、公務執行妨害の現行犯でしょっぴくことになるぜ。脅しに来て逆に捕まったらボスにお目玉を喰らうんじゃないのか?」 「……ちっ、使えねえ奴らだな。イコ、ティオ、後を頼むぜ」  リーダーはアジア系と思しき二人に後を託すと、腰の引けている少年たちと共にその場から走り去った。 「君たちもいったん帰った方がいい。あんな奴の手先になってもいいことはない」  俺が日本語で諭すと二人は互いに顔を見あわせた後、無言で頭を振った。 「まいったな。どうあっても俺たちの捜査を妨害するって言うんなら気の毒だが逮捕せざるを得ない」  俺が伝わってくれと祈りながら語りかけた、その時だった。 「#○+▽△#◇……」  二人が揃って手をつき出した瞬間、もやのような物が指先から飛びだし俺に襲いかかって来るのが見えた。 「――うっ?」  白いもやは尾を引きながら俺の首に巻きつくと、女の顔になって俺の首筋に噛みついた。 「ぐああっ!」  俺は呻き声を上げてのけぞると、身体の奥で眠っている『死神』に呼びかけた。  ――おい、どうやら久々にお前さんの出番らしい。頼む。  ――ふむ、いったい何事だね、刑事。  ――霊体だか幻だかわからねえが、妙な術で痛めつけられてる。悪いが出てきて術者を黙らせてくれ。  ――期待にそえるかどうかはわからんぞ。しばらく外に出ておらぬからな。  俺が首の痛みに耐えていると、俺の身体から黒いもやが沸き出して骸骨の形になった。  ――ほほう、これは初めて見る形の魂だな。……どれ、「尻尾」を切ってやろう。  死神はそう言うと、どこからともなく取り出した大鎌を振り上げた。  ――そうれ、綺麗に真っ二つだ。  死神が大鎌を振り降ろすと、女の頭部にくっついている尻尾がすっぱりと切り落とされた。 「ぎいいいっ!」  俺の首を離れた頭部はしばらく苦し気に飛び回った後、吸い込まれるように空中に消えた。 「ほねのお化け、強い。俺たちの「首」殺した。逃げよう」  術者のうちの一人がそう言うと、もう一人が「日本のお化け、強い」と言って頷いた。  二人のアジア人は俺と相方を怯えた目で見つめると、さっと身を翻し一目散に逃げ去った。  ――助かったぜ相棒。どうやら今度の事件では、お前さんの力を借りることが多くなりそうだ。  ――ふん、死神使いの荒い刑事だ。くれぐれもエネルギー切れで死なんよう頼むぞ。  死神の言葉に、俺ははっとして自分の右手首を見た。俺の手首は燃え残った炭のような灰色に変わっていた。これが真っ白になるとエネルギー切れで俺は死ぬのだ。  ――俺としたことが迂闊だったぜ。昼間にお前さんの力を使うと、エネルギーの減りが早くなるんだったな。  ――久しぶりでエンジンをかけるのに時間がかかったからな。それで減りが早まったのだろう。  俺は死神が身体に吸い込まれたことを確かめると、後ろで控えていた沙衣の方を振り返った。 「片付いたぜ、ポッコ。吹き溜まり部屋へ戻ろう。どうやら思った以上に厄介な事件のようだ」  俺は神妙な顔で俺の手首を見つめている沙衣にそう語りかけると、首をさすりながら目抜き通りの方に歩き出した。
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