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7巡目
◉リベロの守備範囲
その頃、麻雀部の方にまた1人新入部員が入っていた。浅野間サトコの中学の後輩だと言う。
「1年生の野本夏実です。中学では浅野間先輩と同じバレー部でリベロやってました。相手の考えを読むことには長けているつもりです。よろしくお願いします!」
「麻雀部に興味あるって言うから連れて来ちゃったんですけど。良かったですかね?」とサトコが言う。
「もちろん、大歓迎よ。よろしく、野本さん。ところで何で麻雀部に入ろうと思ったんですか?」とユウが聞いてみた。
「私、本当はアタックがしたかったんです。でも、小さいから。拾うのも大切だと思って拾いに徹していたらリベロに任命されてて。それはそれで楽しかったけど、でもいつかはアタックして攻撃の主軸になりたいと願っていました。でも…」
「なるほど、身長がまるで伸びなかった…と」
「はい…」
野本ナツミは身長150センチあるかどうか程度だった。これではアタッカーにはなれそうもない。
「なので尊敬してた浅野間先輩と一緒に高校ではお料理でもしようかと思ったらそっちはメインじゃないって言うじゃないですか。それで、何をしてるのか聞いたら麻雀って。私、麻雀はお父さんがよくパソコンでやってるからやり方は一通り知ってるんです。自分で言っちゃいますけど結構強いんですよ。だから、私も混ぜてください!」
「へえ、自分から強いって言えるほどか…特技とかはあるのかしら?」
「特技ですか…そうですね、推理の幅が広いです。守備範囲とでも言いましょうか…。鋭さはありませんけど、柔らかいつもりです。この予想が外れたならこっちかな、という切り替えに長けています。これはリベロの時と同じなんで」
「なるほど、リベロの守備範囲ね」
「どこに打っても拾われるのでは?という圧迫感から相手の自滅を誘うのが得意です。
どの作戦で行こうとも、私は拾います」
こうして対応のスペシャリスト野本ナツミが麻雀部に加入した。
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