麻雀少女青春奇譚【財前姉妹】完結!

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8巡目 ◉北の扱い  野本ナツミは父親の影響で麻雀ゲームを中学の頃からやっており普段はケータイで『雀(ジャン)ソウル』というゲームをやっているようだった。とくに好んでやっているのは三人麻雀東風戦(さんにんまーじゃんトンプーせん)で、理由を聞いてみると「早いから」だそうだ。これはベテランあるあるで、どアマチュアの参加率がリアルとは比較にならないほど多いネットという環境だと1ゲームは長すぎて疲れてしまうという事がある。なので打ち慣れた人達はネットでは東風しかやらないというのはよくあるパターン。待ってられないのだ、テンポが遅くて。それに付け加えて三人麻雀(サンマ)を好むということはそれ即ち最速の勝負。つまり、猛者が辿り着く最後の地のひとつが三人麻雀東風戦なのである。そこを棲家とする野本ナツミはそれだけで(只者ではなさそうだ)とユウに直感させていた。 「雀ソウルは私もサトコもダウンロードしてあるわ。丁度いい、今からその普段からやってるって言う三人麻雀東風戦(サンマトンプー)とやらを一緒にやってみて野本さんのその腕前を見せてもらいましょう」 「いいですよ!じゃあ友人戦卓立てますので、参加してください!」 ノモノモ(野本ナツミ)準備OK ゆーちゃん(佐藤ユウ)準備OK サトリ(浅野間サトコ)準備OK ーーー対局開始!ーーー 東家サトリ 南家ノモノモ 西家ゆーちゃん 『北(ぺー)を抜くわ』 『北を抜くわ』  開局早々サトリが抜きドラの北を2枚抜いた。しかし、その後サトリからの攻めはなくゆーちゃんがリーチしてツモあがる。 『ツモ!』『リーチツモピンフドラ1』3900点だ。この三人麻雀はツモ損というルールを採用しており普段4人麻雀だと子供2人から1300貰えたので1300+1300+2600=5200だったアガリがそのままの計算式で1人からもらえなくなるため1300+0+2600=3900と、なんだかツモると損をしてしまうルールなのである。 「なんか、ちょっとだけ変な気分ね。メンピンツモドラで3900ってのは」とユウが言う。 東二局(ラスマエ) 『北!』  今度はゆーちゃんがスタートから北を抜いた。しかし攻め込んできたのはサトリであった。 『ツモ!』『リーチツモドラ1裏1』5900点  ゲーム機でやる麻雀は繰り上げ満貫ルールは採用していないのが一般的で、それはこの『雀ソウル』もそうだった。これはリアルに点棒の授受をするわけではないため細かい点数を繰り上げて簡単にする必要などないからだと言われている。 (満貫をあがったつもりが5900点か。変な気分)とサトコも思った。 「お二人とも、サンマというものにちっとも慣れていないんですね」と野本が言う。 「何か変だったかしら?」とユウ 「変も変。お二人とも北というものの扱い方がまるでわかっていないと見えます。あれは引いたら即で横に抜くものではないんですよ。まして配牌でなんて」 東三局(オーラス)  2巡目にゆーちゃんがテンパイする。 『リーチ!』  するとノモノモが手の内から待ってましたとばかりに北を抜く。 『北』  さらに2巡後サトリも北を引いてきて抜く 『北を抜くわ』  リンシャンから引いた牌でテンパイ!追いついてリーチする。 『リーチ』  するとここでもノモノモが手の内から 『北』とし、さらにそこでもう一度『北』  そこで追いついた。ノモノモもテンパイだ。愚形なのでダマにしたが即出てきた。 『ロン!』『一盃口(イーペーコー)ドラ3赤1抜きドラ3…倍満(バイマン)!』 16000点 「私の勝ちですね。勝ったので約束通りこの麻雀部に入れて貰いますよ」 「いや、別に入部試験とかじゃなかったでしょコレ」 「ていうか入部試験(そんなの)無いし」 「まあ、いいじゃないですか。言いたかっただけなんで。とにかく、お二人には北の扱いを教えてあげないといけないみたいですね。三人麻雀の対応方法を私(わたくし)野本ナツミが伝授しましょう!」
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