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7巡目
◉ファーストペンギン(後編)
先制リーチをかけても降りる理由には足らないことくらいもはや経験でわかっているはずだ。なぜなら、リーチが入っても手牌との兼ね合いで降り切れないと判断したら押してアガリに向かう方がむしろ失点を防げるなんてケースは腐るほどあるからだ。
親番ならリーチで機先を制するという戦略が有効なケースも多くあるだろうが子の先制リーチはそういった効果を期待するつもりならほとんど無意味。リーチなんて毎局のように誰かしらするのだからそれが親からじゃないだけ気が楽まである。
先制リーチの理由は解放欲求。もう、疲れるからリーチってね。リーチしてしまえばあとは何も思考する必要がない休憩時間だ。休みたいという欲求から最高形を待たずにリーチしているということ。そんなリーチが強いはずもない。
さらに加えもう1つ。これこそが先制リーチの理由として最も大きい理由。それは、抽選欲求。つまり裏ドラが見たいというとてつもなく単純な欲だ。これが理由として圧倒的でありそれ以外の理由はついでとか言い訳の類のものと言っても過言ではない。あとは打点上昇という理由や、出アガリ可能化という理由があるが、それ以外に多くの欲や言い訳が先制リーチの理由としてあげられるのもまた事実である。
少なくとも何の工夫もない河はほぼ欲が理由でリーチしている。もちろん、欲かいてるんだから我慢して溜めてる人が押し返してきたら不利になりがちなのは当然だ。
それでもいいからリーチしたい。だからする。それだけなのだ。場を操り、展開を作り、状況を味方につけて勝つためには欲は毒。
たしかに、時にはリスクも取って毒をも飲み込み運を味方につけ大勝というのもよいだろう。だが、断言する。ゲームそのものを勝ちたいなら先制リーチは有利ではないケースが多数ある!と。言い方を変えれば少し納得するかも知れない。例えば
追いかけリーチ有利理論。とか。
これなら少し納得いくのではないか。
そもそも後攻が有利なゲームなどいくらでもある。なぜ、麻雀がそれに当てはまるのではないか、という考えを持つ人がこんなにも少ないのか不思議でならない。
リーチをかける場合は後攻有利なゲームではあるがリーチそのもののメリットがあまりにも大きいものだから、その瞬間のチャンスや目の前の欲望に負けてリーチしてしまうだけということになぜ気付けないのか。
先制リーチとは先のわからない道を行くギャンブルだ。言わばファーストペンギン。わざわざ先頭を行き私が矢面に立とうと言うようなものである。せいぜいシャチやオットセイに食われないように気をつけることだ。
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「へえ、面白いわね」とユウは感心する。
パチ
「最近の私はもっぱらこの人のブログばかり読んでるの。過去ブログも面白いんですよ」
パチ
「何さんって言ったっけ」
パチ
「ライジンさんですよ」
パチ
「ちょっと私もチェックしてみるわね」
パチ
「GRREですよ。招待しますか?」
パチ
「ありがとう。もう登録してあるから大丈夫よーーー王手!」
バチ!
(あ、まずい。龍が犠牲になるしかない)
「先輩やっぱり将棋も強いんじゃないですか」
パチ
「これはたまたまよ。セオリーも知らないし。でも、面白いわね。たまには将棋もいいわ」
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「投了」
「はーーーしんどかったー!先輩強いですよ」
「悔しいわ、途中まで勝てそうだったのに」
「歩を金に成れたのは大きかったです、あれがなければ厳しかった」
「と金ってただのメンピンが裏裏乗って満貫になったくらいの威力があるわね、やっぱりプロのいとこは強いわ」
「シンちゃんは天才ですからね」
(あなただって、麻雀の天才よ)とユウは思ったがアンはちょっと褒めたらすぐ調子に乗るタイプなので今日のところはまだ黙っておいた。
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