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8巡目
◉新人王の底力
第4節は波乱の幕開けだった。なんと役満が出たのだ。
役満を炸裂させたのは中野雅也プロ。第35期新人王の彼である。1回戦オーラスに大三元をツモアガリしたという。
中野プロはついていた。もう攻めないと再試験になる可能性がある選手が三元牌を2種掴んだのだ。普通は鳴けないものもその状況だと手牌次第で出ることもあるだろう。(下位7名に2期連続で入るとプロテスト再試験となる)
露骨に怪しい切りをしていたのだが、それでもアガれたのは僥倖である。やはりタイトルを獲るような人間は持って生まれた運の良さのようなものがあるのだろうか。
隣の卓で打っていたミサトの耳に中野の「8000.16000」という声が聞こえた。
(中野プロが役満か…今回で彼も上位7名の昇級ラインに入ったかもな…これが35期新人王の底力か。油断は出来ない!)
しかし、ミサトも負けじと好調で、満貫を2回ツモアガリしての安定したゲーム回しでトップスタート。私だって昇級ラインは切らないわよと言わんばかりの成績を出す。
(負けないわ。私だって新人王なんだから!)
2回戦以降も中野、ミサトの両名とも好調を持続させた。カオリとメグミがそれ程絶不調だったというわけではないが現状維持の麻雀をしていたので後ろから上がってきた選手に一気に並ばれた。
一方マナミはまた地道にコツコツと何度もアガリを積み重ねてじわじわとプラスを加算し、首位を譲らなかった。
ーーー
ミサトの卓とマナミの卓は先に終わり、2人は休憩エリアでパックのミルクコーヒーを飲んでゆっくりしていた。
「マナミは相変わらずね」
「ミサトだってすごいわよ。3連続ラスから始まったとは思えない位置に来たじゃない」
「まだ何も油断は出来ないけどねぇ~。マナミはいいわね、さすがにもう昇級は決まりだもんね。あと1節では何も起きないでしょ」
「どうかしらね」
と言いつつマナミは内心(もう大丈夫だろう)と安心していた。その慢心が命取りになるとはこの時は思いもしなかったのだが…。
4節までの結果
首位財前マナミ+310.6
3位財前カオリ+199.6
5位中野雅也+156.0
6位井川ミサト+150.5
7位成田メグミ+122.9
来月は運命の最終節。
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