14人が本棚に入れています
本棚に追加
9巡目
◉中野雅也という男
中野雅也は新人王とは言えもう30過ぎのいい大人だった。平日は大手企業で働く企業戦士で役職は課長代理をしており、バリバリ働くサラリーマンである。
麻雀は学生時代にハマってアルバイトで雀荘メンバーをしながら大学時代を過ごした。大学卒業後は今の会社に入社して係長まではすぐに昇進した。しかしそこからが長く、責任ある立場ゆえにストレスも多くて太ってしまう。ビジュアルが良いのが中野の良さだったのに太ってしまうし仕事はつらいしで休日に運動でもしようかと思い、津田沼駅から家までの往復しかしてこなかったこの街を少しランニングしてみることにした。すると、見つけてしまう。へんぴな所にポツンとある雀荘『あおい』
それからの休日は決まってランニングしてあおいまで行き、疲れるまで目いっぱい麻雀したらまたランニングして帰る。
ランニングは言うほどたいした距離ではないが肥満になった中野には充分きつい運動だった。それが続けられたのは麻雀がやりたいから。
やがて、少し体型が戻ってきたのを実感してきて家でも体力トレーニングなどするようにしたらしっかりした身体になってきた。
見た目が良くなると信頼もされるものなのだろうか。身体作りをし始めてからというもの部下から慕われて、それにより上司からの評価も高まってきた。気付いたら課長代理へ昇進を決める。ランニングのおかげだ。と思い、中野は(麻雀よありがとう)と感謝した。
課長代理という役職は意外にも係長よりは仕事が少なくて趣味に没頭する余裕が生まれた。
なので、中野は競技麻雀の世界へ足を踏み入れることを決めた。
その事をあおいのオーナーである田所史子たどころふみこさんに相談してみた。この店は田所直人さんと史子さんの夫婦で経営している。
「史子さん、おれ自分の力を試してみたい!」
「良いんじゃないの。雅也くんは本当に強いし、人生は一回きりよ。やってみたいことは挑戦してかないと」
史子に後押しされたのもあって、そういった気持ちでプロ入り。そして2年後に35期新人王となるのであった。しかし、リーグ昇級は逃し未だ最下位リーグのまま。そんな中野についに昇級チャンスが訪れた。
36期前期リーグ戦第4節で役満をツモり初めて昇級圏内で最終節を迎えることになった。
中野にとっても、中野を応援している雀荘のみんなにも、大切な戦いが来月行われる。
(勝ちたい!絶対に…昇級したい!)
それぞれが様々な覚悟を持ってリーグ戦へと挑んでいた…!
最初のコメントを投稿しよう!