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18巡目
◉スーパールーキー
「じゃあ、まず店長に連絡しましょう」
「そうね、プロ辞めたと思ってシフト作り始めてたら大変だものね、だって来月は女流リーグが始まるし」
そう、プロリーグはカオリたちには2つある。1つは普通の男女混合リーグ。そしてもう1つは女性だけのリーグ戦『女流リーグ』だ。
リーグ戦を終えたら直ぐに女流リーグが始まる。
「あ、もしもし。店長、あのね実は……
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一方、中野雅也はというと、ニューヨーク支店行きを結局は喜んでいた。
(リーグ昇級をムダにしてしまったのは悔やまれるけど会社員にとって栄転はそれ以上に喜ばしいことだ。まして、ニューヨーク支店。断ったりしたら一生後悔する)
中野の今期リーグ戦は役満をツモったり三倍満をツモったりと奇跡の首位昇級だった。それだけでいい、辞めるならむしろこの、自分が最強だった記憶を最後にするのは悪くない。
中野はプロになるきっかけとなった雀荘『あおい』の店主に挨拶をしに行った。中野はあおいのオーナーの後押しがあったからプロになろうと思ったのだ。
「史子さん、おれ、この店に偶然出会えて本当に良かった。
おかげでこんなに楽しい思い出がいっぱいです。おれの人生は、今とても豊かです。恋人がいなくても。結婚してなくても。プロリーグを辞める事になっても。こんなにも豊かです。
少しの間お別れですけど、いつかまたここに来ますね。
今日までプロ雀士中野雅也を応援していただき、誠にありがとうございました!」
「雅也くん。また、卓上で会える日が来るって信じてるよ。栄転おめでとう」
「…必ず、また会いに来ます。どれだけ先になろうとも、必ず!」
そう言うと中野はガラガラッと扉を開けた。
「もう帰るのかい?一回くらい打っていきなよ」
「けっこう忙しくてね、時間がないんだ。おじさんにもよろしく言って下さい。それじゃ。また」
※マスターは基本的に遅番をしてるので今はぐっすり寝ている時間だった。
「うん、またね。約束だよ」
かくして、繰り上げとは言え財前香織はリーグ戦初出場にして首位昇級者。井川美沙都は新人王にして2位昇級。財前真実は新人王戦3位で4位昇級となった。素晴らしい結果である。
これにより、彼女たちは新世代のスーパールーキーとしてその存在を認知され始めるのであった。
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