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3巡目
◉ラボ
飯田雪はおぼつかない手つきだった。牌に触れたのはコレが初めてだと言うからそれも仕方ない。
「なんか麻雀牌って重いんですね。それに、デザインも描いてるんじゃなくて彫ってあるんですね。素敵だなあ。知らなかったなあ」
そう言いながら飯田はまじまじと自分の手牌を見つめる。
「盲牌って聞いたことないか?あれはさ、指先だけで何の牌を引いたか当てることなんだよ。この彫りの手触りだけでね」
「そっ、そんなこと可能なんですか?!」
「出来る人には出来る。おれは苦手だけど」
「ふふっ!なんだ、苦手なんですね。凄い!と思って聞いてたのに」
ふふっ!と笑う飯田は笑顔が幼い少女のようでなんだかミサトはキュンときた。
そんなこんなで半荘2回を行いミサトと店長が1回ずつトップを取って終了した。半荘2回を通して飯田を観察したミサトの感想は(飯田さんはとても丁寧に麻雀するなあ…鍛えたら強くなりそう。あと、顔がかわいい、髪を伸ばせばもっといいのに)と思ったという。
ゲーム終了後にミサトは思い切って話しかけた。
「あ、あのさ。飯田さん。私も今18歳なんだけど、私達お友達になれないかな?」
「えっ…ぜ、ぜひよろしくお願いします。ユキって呼んでください。名前…気に入ってるので」
「同じ同じ!私も自分のファーストネームを気に入ってるの!私のことはミサトって呼んでね、ユキ!」
「わかりました…よろしく、ミサト」
(かわいい〜!)
ミサトの中で何か禁断の扉が開いたような音がした気がしたが(気のせいだろう)と思うことにした。
「小宮山さん、ユキちゃんのこと今日ちょっと借りてっていいですか」
「いいけど、返せよ」
「あはは!そのうち返しますので。行くよ、ユキ」
そう言うとミサトはユキの手を引いて外へ連れ出した。
「行くってどこへ?」
「研究室よ。私たちには『麻雀部』があるの。そこにあなたも招待したい」
「ラ…ラボ〜?」
こうして、麻雀部にまた新しい新入部員が加入した。
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