麻雀少女青春奇譚【財前姉妹】完結!

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第十二局 3巡目 ◉ウソツキ剛太  佐々木剛太は破天荒な見た目?に似合わず、とてつもない守備力の高さを誇る完全守備派であった。ある雀荘では月間トップ率No.1打数No.1マナーNo.1ラス回避率No.1のそれぞれにサービス券を10枚プレゼントという月間イベントをやっていて。佐々木はそこでラス回避率部門でのNo.1を取る常連だった。(マナー部門はスタッフ全員で話し合って決めている。ちなみに佐々木はそれでNo.1になったことはない)そこのスタッフAが言うには佐々木剛太が鳴いてるホンイツに放銃した所なんて見た事がないという。佐々木曰く「分かってる満貫に振り込むことないだろ」という事らしいが、そうもいかないのが普通ではないだろうか。しかし、彼は本当に放銃しない。  また、彼は成田離婚経験者でもある。新婚旅行でアメリカへ飛びラスベガスで喧嘩して成田で離婚。そんなことをする男。  発言もしょーもなくて「剛太さん、これ通った?」と局終了時に聞かれた時には必ず「通った通った!大通りよ」と言う。当たり牌でもだ。 彼曰く「当たりだったよなんて言って気分良くさせる必要ないだろ。通ってたかー。ガッカリ。って気分にさせて落としていくんだよ」と言う。言い分はわかるが普通そこまでするか?そんな普通ではない彼だから、プロ入りして即で新人王を取っているし、その後『牌覇王』という大きなタイトルを2連覇している。  そんな彼が南1局の親番にドラの南を仕掛けた。切ったのは左田だ。かなりの勝負手が来ていたので腹を括って第一打で捨てたがあろうことか親に鳴かれたのである。最も悪い展開。そして、8巡目。マナミが捨てたのは二。それに対して…。 「チー」  一三と晒してカンチャンチー。マナミは(しまった!)と思った。佐々木はマンズを1枚も切っておらず、マンズホンイツの予感はあったのに(1枚くらい)と切ってみたらカンチャンで喰われてしまったのだ。これは痛い。しかし、本当に戦慄したのは次の瞬間であった。 佐々木剛太が鳴きで出してきた牌は…。 打南 (南?!)  全員が震えた。親番で、ドラも鳴いてて攻める方針と確定してる場面で、カン材を捨ててきた。それはつまりカンするヒマなし。ということ。麻雀はチーやポンをしたら必ず何か切らなければならない。連続でアクションを起こしていいのはカンからのカンだけ。要するに、この打南から(ささき)は南ホンイツドラ3をテンパイしたことを読み取れるのである。  18000点の手。それをテンパイしたと宣言されてはさすがの左田もマンズと字牌は切れないとなり手を作り直すしかなかった。竹田もマナミもこの圧力には立ち向かうことは出来そうにない。しかし、この時の佐々木の手は… 佐々木剛太手牌 一一四伍九中白(一二三)(南南南)  なんとバラバラ!普通にまだ南をキープしておける手でありながらちっとも鳴く必要のない二をチーして打南。これが佐々木のやり方だった。  完全に騙された3人は手を崩すほかなく。後になって(なんだ?佐々木はブラフなのか?)と察してももう遅い。じっくり時間をかけて佐々木は流局寸前にツモアガる。 「ツモ!6000オール」 一一四四四伍七 六ツモ(一二三)(南南南)  タイトル戦本戦の常連である佐々木剛太プロの真骨頂!迫力で圧をかけて、相手を降参させる戦略。  マナミたちはまるでウソツキのような6000オールでこの半荘の決定打になるアガリを剛太に決められてしまったのだった。
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