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第十二局
12巡目
◉私なりの完璧
4回戦になり、雀聖位へ最も近いのはマナミだった。ここでプラスを出せば優勝。そうなればタイトル獲得の力があるプロとなり今後のプロ活動やゲストプロとして呼ばれたりする仕事で確実に影響が出るはずだ。
正に人生を賭けた半荘。しかしそれは他の3人も同じだった。
特にユウは、これから麻雀教室をやっていこうというユウにとって優勝という実績ほど欲しいものは無かった。タイトルは既に獲ったものの『第1回UUCコーヒー杯』などという新しい大会のタイトルでなく、歴史ある『第30回雀聖位』のタイトルこそが欲しかった。
河野はと言えば、タイトルはそこそこ獲っているがそれだって毎回苦労して獲ったものであるし、麻雀プロである以上タイトル獲得ほど欲してやまないものもない。
それで言えば左田にとってはこのタイトル戦は滅多に訪れないチャンスである。実力では劣る左田が前回王者のシード権のおかげもあり決勝戦にまた残れたのだ。そしてこの半荘。トップなら優勝という位置に着くことが出来た。そんな機会は50歳を過ぎている左田にとって人生にもう二度とこないかもしれない大チャンスだ。
(4人ともオーラがすごく出てる…オーラが邪魔で観戦しづらいんだけど…)
《見え過ぎるのも困りものですね。ふふ、世界で唯一カオリだけの悩みですね》
(笑ってないで、どうにか消せないのこれ)
《え、わかりません。私も神として顕現したのとか初めてですし。なにもかも全然分かってなくて。私にわかるのは自分は付喪神だってことと私は優れた麻雀を打てるってことだけなんです》
(そうなの?!)
《そうですよ。そもそも私、ただの物質でしたからね。カオリが私を呼び覚ますまで、ずっとただの赤伍萬でしかありませんでしたし》
(それが今はもはや一番の友人かー。不思議ね)
《ほんとですね。あ、始まりますよ》
左田純子は思った
(今まで、たくさんミスしてきた。しっかり考えればわかるのに、自分のだらしなさを恨んだ日も何回もあった。自分ほどの知識があるのにAリーグに行けないのはミスをするからだ。考えてもムダなことに対して適当に対応するのはいい。でも、分かることを考えないでミスして負けるのはもう、イヤ。…イヤと言っても治らないのが私なんだけどさ。でも、その悪い癖。この半荘でだけは出ないでくれないかな。一生のお願い!神様!この半荘だけでいいです!私に、私なりの完璧な麻雀を…打たせて下さい…!)
《左田純子が祈ってますね。欲張らない、とても謙虚な願いでした》
(なんて祈ってたの?)
《この半荘はミスなしで打ちたいそうです》
(勝ちを下さいとかじゃないんだ)
《自分のミスで負けることが耐えられないんでしょうね。分かる気がします》
(応援してあげたくなっちゃうね)
《マナミもユウも左田純子も応援したくなりますね。もちろん、河野プロがなにか悪いわけではないんですが。彼はAリーガーですし…》
(カオリがwomanと話しているうちにユウがテンパイした)
一三四伍六七八②②④345 二ツモ ドラ八
3面待ち!高目で一気通貫も付く。アガリやすさと打点の両方を兼ね備えた理想的なテンパイだ。麻雀とは最高打点が理想形とは限らないゲーム。打点の他に作りやすさ。完成する可能性の高さなどを考えた上での総合的な妥当案こそが理想形と呼べるのである。そう言った意味ではツモ⑤でのタンピン三色よりツモ二でのイッツーの方がいいと言える。
(一番欲しい所が入ってテンパイした!手ごたえは充分だ。勝負!)
「リーチ!」
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