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第十二局
16巡目
◉ダブリー
雀聖位戦最終試合もいよいよ南2局。佐藤優の親番となる。
現在の点棒状況
財前30200
佐藤25800
河野20800
左田23200
(この親で暫定1位をまくる。絶対失敗できない。マナミ…まさか、私たちがこんな舞台で戦う日が来るとは思ってなかったよね…あの日、隣の席になった高2の日。私のことを麻雀に誘ってくれてありがとう。おかげで…こんなに…)
ユウ4巡目
一二六八③④⑤⑦999西西 七ツモ ドラ①
(こんなに!私の人生は今、燃えている!)
「リーチ!」
ユウのキレイで長い指が横向きに⑦を置く。それだけの行為に対局者たちはGを感じていたし対局室の温度もカッと上がった錯覚すらあった。
このリーチは勝負所だ。ツモ三からなら打八としてテンパイ取らずという手があったが七を先に埋めてしまっては⑦の横伸びにしか期待が出来ず、親ならここでもうリーチと行く方が良い結果を生み出してくれそうである。しかし、ドラなし愚形。反撃を受けた時のリスクはかなり高い。結果がどうなるかが勝負なのではなくて、ここで子方がリーチに降参してオリを選択してくれたらユウの勝ち。反撃してきたらユウの負け。そういう、勝負所なのである。
しかし
打七!打②!と危険牌を2連打して押し返してきた奴がいた。河野勇一郎である。
(親リーだからってオリてられるか!もう南2局なんだ。雀聖位にあと3局で届くんだ。この半荘を勝ちさえすれば!)河野はそう自分に言って勇気を振り絞って押した。河野はドラ暗刻の手なのだ。
「ロン!」
結局、河野の放銃でユウがアガる。裏ドラは1枚乗っていた。
「3900」
「はい」
(ホッとした〜…河野プロ。全力で押し返してきて怖かったなあ)
(チッ、放銃になったか。だがまあ3900ならいい。それにどうせツモられたら2600オールになる手だ。点差という見方では3900放銃も2600オールツモられも7800点差つけられるというのは同じ事。気にすることはない)
財前30200
佐藤29700
河野16900
左田23200
南2局一本場
先ほど悪くない放銃をした河野が満貫をツモアガる。ドラ3のタンヤオだ。
点棒状況は平均化。全員が2万点台と言う状況で南3局を迎えた。
財前28100
佐藤25600
河野25200
左田21100
南3局
(微差ラス目か…ここで一回アガって弾みをつけてからオーラスの親をやりたいわね。高くなくてもいいから、アガれそうな好配牌。いまここに来て下さい!!)
左田純子はそう祈りを込めて配牌を取った。すると…
(なっ…なにこれ。凄)
なんと、左田に届いた配牌は何を引いてもテンパイするイーシャンテンだった。
「リーチ」
打⑨
あと2局というところまで来て左田からのダブリー。
(全く、麻雀ってのは本当に試練の繰り返しだな)と親の河野は思った。せっかく満貫ツモって優勝が見える位置に戻ってきたのに親番にダブリーが入れられるとは。しかし、嘆いている場合ではない。
《すごい配牌ですね。何引いてもテンパイの手なんて》
(面白いね。凌げるかしらね私たちの麻雀部は)
《頑張ってもらいたいです》
(あの2人ならきっとやるわ)
果たして、左田のダブリーを凌ぐことは出来るのか。雀士が人生を賭けて戦うタイトル戦決勝も残りわずか2局ーーー
財前28100
佐藤25600
河野25200
左田20100
供託1000
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