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8巡目
◉欠けていたもの
今日は師団名人戦の一般予選だ。プロアマ混合の大会では最も歴史が古く。格式の高いこの大会は参加人数も他の大会の比ではなく、これで一回でも優勝すればA1リーグに行くよりも価値があると言われる程のものだった。
そんな事言われてもそれがどれ程の事なのかいまいちピンとこないカオリたち。
師団のA1リーガーというのはその年の黄竜位含めて世界にたった13人しかおらず、1年に一度だけ下位2名がA2の上位2名と入れ替わる。つまり単純な話。A1に居るというだけで毎年13分の1の確率で黄竜位というタイトルに届くということになる。その賞金は150万円だ。
それよりも獲りたいタイトルと言われる唯一のもの。それが『師団名人』なのである。師団名人戦はその賞金の大きさ(300万円)もさることながら過去に師団名人になった人は必ずそのまま麻雀の大きな仕事を貰えた。解説者であったり、レッスンプロであったり、戦術書出版であったりとそれぞれ色々ではあるがとにかく仕事を長期的にもらう事が確約しているような所はあった。しかし、カオリにはそんなことは関係ない。それより優勝しなきゃいけない理由があった。womanとの別れの前に一人前になった証明をする。そればかりを考えていた。
カオリがそんな事を思っているとは知らず、最強の敵が参戦する。
一般予選参加者の中に
飯田雪
倉住尚子
浅野間聡子
そして、天才児。竹田杏奈
その4人の名前がある。
「あ、アンも出るの?」
「もちろん!やっと参加できる年齢になったんですからやりますよー!」
「そっかあ、頑張ってね」
「なんか顔が笑ってないですよ」
「ソンナコトナイヨ」
なにがなんでも勝ちたい勝負においてアンはとんでもなく邪魔だなあと。そんな気持ちを初めて持ったカオリだった。それは遊びではなく勝負師として、プロとして、勝利を欲する貪欲さから起こる気持ちであり。カオリに今まで欠けていたものだったかもしれなかった。
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