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17巡目
◉能力
《私、思ってたことがあるんですけど》
(なに?)
《テンパイ時気合い込めないってかなり難易度高くないですか?》
(まー、慣れだけど。確かにそうなのよね。どーしても微量に漏れたオーラで『伍』を引き寄せちゃう時あるわ)
《捻じ曲げて作る伍待ちテンパイとかは関心しませんけど、普通にやって伍待ちの場合はオーラ使えばいいんじゃないでしょうか。それが自然なんですし。結局、それでも相手の手にあれば引いて来れないわけですから》
(うーん、それでいいのかな…)
《そういう能力があるのはカオリが望んだものではなくて勝手に身についたものなんですからそこまで気にしないでいいと思います。中には選択ミスしそうになると電流で教えてもらってる人もいたわけですし(マナミ)超能力者はカオリだけってわけじゃないんですから…きっと気付かないだけで世の中には色々な能力者がいるはずですよ》
(そうかな…じゃあ自然と伍待ちになった時だけオーラツモ解放しようかな…)
《そうしましょうよ。34種136牌のうちのたった1種4牌だけにしか反応しない出番の限定された能力ですからそこまで気にしなくていいじゃないですか》
(それもそうか)
その日からカオリは自然と伍待ちの時は遠慮なくオーラで伍を引くことにした。と言っても、それのために気合いを込めてというわけではなくあくまでも自然体で。意図してオーラを抑えていた今までの方が不自然であるという考えで、自分の自然な状態で、仕事でもプロリーグでもオーラを『気にしない』ことにしたのであった。
来週はついに師団名人戦プロ予選。
ーーーーー
その頃、財前真実は失った能力を補うつもりでカオリの部屋にある麻雀戦術本をとにかく読み漁っていた。しかし…
「だーーーー!だめだ役に立たない!」
(時間ムダした!今さら読んでも知ってることしか書いてない!ていうかなんなの?みんな知ってる共通認識みたいな戦術しか書かないで本の出版ってしていいもんなの?自分が発見したオリジナル戦術のひとつやふたつ載っけたらどうなのよ!まったく、初心者にしか意味ない本ばかりね。これなら私達がした研究の記録を読み返した方がいいわ)
そう思ってマナミは部室へ行くことにした。やはり鍛練するなら部室が一番。行けばきっとユウが相手をしてくれる。
しかし、珍しくその日は佐藤家に鍵が閉まっていた。
「あれ?いないのかな」大抵いつ来ても入れるから連絡なんてしないで来たが、そりゃ居ない日もあるに決まってた。ユウに連絡を入れてみる。
トゥルルルルル…トゥルルルルル…
『はい』
「あ、ユウ。いまどこいんの?おうち入れないんだけど。少し待ってたら帰ってくる?帰ってくるなら縁側に座って待ってるけど」佐藤宅には縁側があり、そこからの景色は家庭菜園とその先にはほとんど使われていない月極駐車場と静かなものだった。その庭を見るのがマナミはけっこう好きなのだ。
『今日はまだまだ帰らないわよ。それよりマナミも『緑一荘』に来ない?ここに座学エリアを充実させようと思って本棚設置したりプリント作ったりと忙しいのよ』
「行く!お腹すいたからなんか食べてから行くわ」
『それなら『グリーン』で食べたらいいじゃない。今日はショウコが特製パスタ作ってるわよ。私はもう食べた。ピリ辛のベーコンクリームパスタ美味しかったわよォ』
「絶対それ食べる!急いで向かうわ」
『グリーン』に到着すると入り口の手前に黒板が立ててあり【本日のオススメ】ショウコの特製ピリ辛ベーコンクリームパスタ。溢れる程の長いベーコンを表面はカリッと焼き上げてパスタにドーンとたっぷり入れました!クリームもたっぷり入れて経費とかまるで無視した美味しいものになるようにという探究心だけを重視して作った一皿。800円
とショウコの字で書いてあった。写真も貼ってあり、そのパスタの美味しそうなこと!
「はい、マナミさん。お待たせしましたピリ辛ベーコンクリームパスタです」とアンが料理を運んできた。
「うわぁおいしそー!いただきます!………うまぁ!!」
「食後にコーヒーも用意してますからね」
アンはグリーンの給仕。コーヒーやデザートを作るのはアンの仕事。麻雀教室のメインアシスタントでもあり、そちらでも美味しいホットコーヒーを淹れてくれる。
ショウコは調理師専門学校に通いながらグリーンの厨房でも働いて麻雀教室を少しだけお手伝い。
サトコは大学生になり勉強を頑張りながら麻雀部にも顔を出して麻雀の特訓も欠かさない。
麻雀部第2世代の彼女たちもしっかり大人になろうと皆成長していった。
美味しいパスタを食べた後はユウの麻雀教室『緑一荘』の座学スペースへ行って忙しそうに新しいパソコンの設置やら宣伝広告を作るユウの横で延々と1人で麻雀の研究を日が暮れるまでやったのだった。そして暗くなってきたから帰ろうとしたらユウが一言「使用料」と言ってきた。
「えっ!金とんの?!」
「ここは店なのよ。ただなわけないでしょ」
「い、いくら?」
「グリーンのアイスコーヒー一杯でいいわ」
「なんだ、それでいいなら」
「特別だからね」
そう言うとユウとマナミはグリーンでアイスコーヒーを飲んでから解散した。
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