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3巡目
◉決断の一打
一方、財前香織は危なげなくアガリを重ねていた。今日のカオリは集中力が違う。気合いが違う。『絶対に負けない!』という甲子園球児にも似た覚悟がカオリから感じられた。トップの座を一切譲ることなく徐々に徐々にリードを蓄えていく。
中でも秀逸だったのは南3局6巡目親番中のこの手
二三三四四五六③④⑤3467 ドラ①
テンパイ時即リーチを打つにはソーズのリャンメンが良さそうなのでソーズに手をかけるのは難しい手に見えるが財前香織は場を見てよく読んでいた。
(この局はマンズがアガリやすい。最終形はマンズになるように舵取りして行こう。三色は無視、ソーズが引けるとしたら下よりも上…そんな場になっていることを加味したら…)
打3
理屈はわかる。だが、なかなか切れる3ではない。裏目を引いた時にかなり痛い。決断力のいる一打だ。
次巡以降
ツモ二
打4
ツモ6
打7
「リーチ」
ツモ七
「ツモ!(一発)」
二二三三四四五六③④⑤66 七ツモ
裏ドラをめくるとそこには三があった。
「8000オール」
この一撃で突き抜ける。普通のアガリに見えるが実際にこの手をもらって親倍満に仕上げることが出来る人間はそうはいないだろう。大抵は6巡目に打六か打二だ。マンズが状況的に良く、最終形として優秀という確信をしていなければ仕上がらない。打六派ならテンパイ止まり、打二派はノーテンなのである。
「…ふぅ」
カオリが深く息をした。息をすることすら忘れて集中力を高めていたのだ。そうでもなければ切れない3切りだった。
《素晴らしい…》
(私、絶対負けないから!)
この局でトップは独壇場になったので次局以降は戦う必要がない、2着までが勝ち抜けのトーナメントはラス前で突き抜けるともうほぼ勝ち抜け確定なのだ。残りの局は猿山プロが仕掛けてポンポンとアガって2着を確保。
こうして3回戦は終了した。
「ありがとうございました!」
財前香織プロ予選3回戦突破!
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