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11巡目
◉本戦1日目終了
アンとユキが対局を終えてカオリの所にやって来た。
「あ!アンちゃん、ユキちゃん。どうだった?1回戦」
すると2人は残念そうに首を振った。どうやら2人は1回戦通過ならずのようだ。まあ、そういう事もあるだろう。むしろよくこんなに勝ち抜いたものだ。アマチュア予選を勝ち抜くだけでもかなり難しいのだから。
「そっかー…」
「別にこれ1回が唯一の大会じゃないし。また別の大会で頑張りますから。私は大丈夫です」そう言ってるアンの顔はめちゃくちゃ悔しそうだった。アンくらいの腕があると負けた時は悔しくてたまらないんだなとカオリとユキは思った。
(私はまだ負けてここまで悔しいとはきっと思えない、精進しないとなぁ)
《アンは元々かなりの才能を持つ子でしたからね。自尊心は人一倍でしょう》
「アンちゃん。いこ。ちょっと外でお茶でもしてそのあと応援しに戻ってこようよ」
「うん…」
競技麻雀は人によってはどんなレートの麻雀よりも情熱を、いや、人生の全てをかけている世界のひとつである。その熱量を持つ選手こそがアンでありユウでありミサトであり財前姉妹であった。
(アンの分も頑張ろう)
《ユキさんの分もね》
(あの子はまだ…そこまでじゃないでしょ)
《鈍感ね、そんなわけないでしょ。ユキさんは予選を2回参加するほど競技麻雀に夢中になってたんですよ。忘れたんですか》
(そうだった…)
アンは歳下だから悔しくてもユキはアンの面倒を見てくれていたのだ。よく見たらユキも悔しそうな口をしているではないか。
(ようし……絶対勝ってやる)
「ロン!」
「ツモ!」
「ツモ」
「ツモ」
「ロン」
「テンパイ!」
「ツモ」
気付けばカオリは猛烈な勢いで加点していた。そして、それは別卓のミサトも同じだった。
2人の分も頑張ると決めたからというわけではないがカオリもミサトも2回戦をしっかり1位で通過!この日の師団名人戦本戦を勝ち抜く。
本戦1日目はこれで終了、次の開催は来月。左田純子の待ち受ける本戦3回戦にカオリとミサトは残ったのであった。
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