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第十六局
【決勝戦編】
1巡目
◉決勝戦開幕
11月10日
決勝戦当日の朝。
カオリは早起きしていた。今日ばかりはミサトと違う電車で行く方がいいと思って、時間が被らないように1時間くらい早く起きたのだ。
今日は一緒に行かないというそのことはミサトにも伝えてある。少しだけ寂しそうにミサトは「そりゃ、そうだよね」とだけ言った。
師団名人戦の決勝は4回勝負。それぞれが1回ずつ起親をやり、平等に戦うシステムだ。ちなみに前回優勝者は決勝戦を怒涛の4連勝で圧倒した小島章プロだが、彼は今回優勝者シードの本戦3回戦からの参加でいきなりダブ箱級の超ド級ラスを引いて即敗退しているから麻雀は何があるか分からない。
「カオリ。頑張れ!ミサトとどっちを応援していいか困るけど、やっぱり私は妹を応援する!」とマナミはエールを贈ってくれた。いつもは好敵手だからマナミからこうやって応援されるのは珍しい。
「ありがとう、私はもう行くけどマナミも仕事頑張ってね」
「試合のLIVE始まったら絶対仕事中でも画面越しに応援しまくるから」
今日は土曜日。最近では財前姉妹ブームゆえに『ひよこ』の土日の売り上げは右肩上がりだった。カオリが出勤出来ないとなるとマナミがその分まで働くしかない。本当なら1番近くで妹を応援したいけど、雀荘の仕事も2人には大切な仕事。穴を開けたくはない。例え店長が休んでいいと言ってくれても。遊び半分で仕事をしてるわけじゃないというプロ意識が財前姉妹にはすでにあったのである。
ーーー
『さて、今年も来ました師団名人戦決勝卓です!実況は去年も担当させていただきました私、杜若茜です。よろしくお願いします!』
そう言うと杜若プロはペコリと一礼した。
『はい、そして解説にはやはりこの人!小林賢プロ』
『よろしくお願いします』
『そしてーートーナメントを突破してきた選手たちの入場です!!』
『最初に入場してきたのは新人にして王!女流雀士にここまでの守備力が今まであったでしょうか!鉄壁の守備力を誇る井川美沙都プロ!』
ワアアア!!
パチパチパチパチパチパチ
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
『2番目の入場は雀聖位を獲得してからというもの怒涛の勢いを見せる今最もノッている雀士!左田純子プロ!!』
ワアアア!!
パチパチパチパチパチパチ
「経験の差を見せつけるわよ!」
『3番目の入場はリーグ戦、女流リーグその両方を見事昇級してきた噂の美人姉妹。その妹の方。今日はどんな戦いを見せてくれるのでしょう!財前香織!』
ワアアア!!!
パチパチパチパチパチパチ!
「あ、ありがとうございます。よ、よよろしくお願いします」
カオリは緊張でセリフはカミカミだったし足も震えていた。
(これが、決勝戦…!)
《カオリ、落ち着いて。緊張してるのはあなただけじゃないの。みんな同じよ》
(みんな同じ…?)
よく見てみるとジュンコもミサトも震える足を押さえてた。
(そっか、ジュンコさんですらそうなのか)
『そして、最後の入場になります。今最も強い女流雀士と言っていいかと思われる、期待値計算の申し子!高学歴理系女子!彼女が負ける姿は想像出来ません!現女王位!白山詩織!!』
ワアアアワアアア!!
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ!
「あ、がんばります」
シオリだけは少しも緊張してなかった。さすが、決勝戦の常連なだけはある。
『以上の4人が決勝卓に残った勇者です。間違えないで下さい、これは師団名人戦です!女流タイトル戦ではありません!彼女たちは猛者どもを倒してここに来ているのです!!それでは間もなく試合開始です!選手のみなさんは卓に移動して下さい』
4人が卓に移動して場所決めをすると各々の席に着き決勝戦開幕ーー
「「よろしくお願いします!」」
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