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7巡目
◉井川ミサトの高打点
3回戦。ここで挽回しなければならないのは井川ミサトだった。カオリは要所要所でアガリを取って焦る必要ない立場をキープしていたがミサトの麻雀はそうじゃない。ミサトはチャンス手をドガッと決めてそれ以外は鉄の守備を貫くようなタイプの打ち手だ。
しかしそれも力量差があるから可能な勝ち方。今回のように相手の力量も凄まじいとなると肝心の『チャンス手をドガッ』が出来ないでいた。これじゃあジリ貧だ。
打点力のあるミサトだが、2回戦まではただただ傷を負い疲弊しているばかり、そんな決勝3回戦目。
東1局
親番
ミサト手牌
二三四③③④⑤⑥⑦⑦２３４ ドラ二
7巡目にこのテンパイをいれてダマに構えるミサト。
『打点は欲しいからこそのダマテンですが。どうですか小林さん』
『彼女らしいですね。三色になってくれればいいですが』
しかし、9巡目。
ミサト
ツモ③
「リーチ」
打⑦
二三四③③③④⑤⑥⑦２３４
『…あっ！ツモ③は2000オールのアガリ牌だったはずです！それを全く躊躇なく！解説が追いつかない速度でフリテンリーチにしました！さすが36期新人王井川ミサト！』
『このフリテンリーチはいいですね。高めの②とかツモって来そうな感じしますし、しかしノータイムでしたね。決めていたんでしょうね。こうなったらフリテンで曲げるって。若い頃の私にはそんなことは出来なかった気がします。すごいですね彼女…』
『高打点とはこうやって作るんだ！素人とプロの違いを見せつけてあげる！！そう言っているような選択です！井川！』
（引ける！この②はきっと引ける！！）
そう信じてミサトはツモ山に手を伸ばす…が。
二
三
７
中
『しかし、ツモれません！嘘でしょう？』
⑥
白
「ポン」
ツモるどころかついには上家の白山シオリに白を鳴かれてテンパイされてしまう。
中
『5面張なんですけどね』
西
（もうあとハイテイの1枚しかない…この②⑤⑧④⑦の5面張が引けないまま流れるなんてあるの！？しかも1人テンパイですらないなんて。でも、私は自分の信じた選択をした…はずだ。私はあれを東1局から2000オールなどと言ったことは今まで一度もないし。そうやって勝ってきた…悔いは…ない！でも、でも、でも！！！）
最後の牌を引きにツモ山へと手を伸ばす、その心臓はいつもより大きな心音であったような気がする。
（お願い、お願い、お願いよ！！）
「あ」
そこで引いたのはリーチ時に一度は捨てた⑦だった。
「ツモ」
『ハイテイでツモったーーーー！！』
（あはは、⑦ね。安めのキミがハイテイで戻って来てくれるんだ。なんて、安めとか贅沢言ったらバチあたるよね。2000オールが4000オールになったんだもん）
ギリギリでアガることが出来てホッとしたミサトは裏ドラをめくるのすら忘れていた。
「ミサト！裏！」とすかさず左田ジュンコが指摘する。
「あっ、ああ、すいません」
そこにあったのは…
（あ…。ずっとずっと念じてたのが…忘れた頃に叶うなんてね。ありがとう…麻雀）
②
『裏ドラ③！！！！』
『ハイテイでツモって裏3です！こんな奇跡がありますか！！！？』
「8000オール」
その後もミサトは跳満や満貫を繰り返し、圧勝！あっという間に総合で優勝争いに参戦する。
ついに獣の牙を剥いた井川ミサト！
《さすがでしたね、ミサトは》
（そうこなくっちゃ！あとは最後に私が頑張る番だ！！）
3回戦は打点力を見せつけた新人王ミサトの半荘ーーー
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