麻雀少女青春奇譚【財前姉妹】完結!

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11巡目 ◉注文の逆を行け  シオリとジュンコはここで(絶対にこの半荘だけはノーミスで打つ!)という心構えでいた。それは立派だったが、カオリとミサトの心構えはそれ以上だった。 (最後の半荘だ。絶対に満点を…いえ、それ以上のウルトラCの麻雀をしてみせる!今日、いまここで自分の枠をブチ破る!!)  さながらオリンピック本番で自己新記録を出すアスリートのよう。  この考え方こそが佐藤スグル直伝のものだ。細かいところは教えてくれないスグルだが、強く生きるとはどういうことか。そう言う話はよくしてくれた。  かつて麻雀部で佐藤スグルはこう教えてくれたーーー 「いいか、そつなく打つな。小さくまとまろうとすんな。多少危険だろうと構わない。もとより安全と勝利は両立しないものだ。  上手くなくていい。ただ挑戦者であれ!いつだって満点以上を出すつもりで戦いに挑むんだ。そうした時にやっと初めて満点が出るんだよ。ミスしないぞという心構えじゃ80点の正解が限界だからな。120点取るつもりでいて初めて100点が目指せるってこと忘れないこと!」 「「はい!」」 「力強くあれ!おれたちはチャレンジャーだ!」 ーーーー ーーー  この心の持ちようがカオリたち麻雀部の強さなのだった。そして今その心構えの効果が結果に出た。 「リーチ」  白山シオリの先制リーチだ。そこに対してカオリは安全牌を持っている。しかし… 打②(挑戦!) 打①(挑戦!!) 打一(私は挑戦者!!)  真っ向から立ち向かって無筋無筋無筋と3連打するカオリ。 打三 「…ロン」 4枚目の無筋でついに捕まるが…。 三三七七七②③④⑨⑨⑨発発 「1600は1900」  怒涛の勢いで踏み込んで行ったのが功を奏して1900失点で鎮火する。この手は高めなら3200。ツモなら三暗刻がついて安めでも満貫の手だった。カオリは放銃することで被害を最小限に抑えたのだ。これにはアガったシオリも嫌な予感がしてしまう。 (カオリ!ナイス放銃!)見ていたミサトもジュンコもそう思った。おかしな事にこの局をアガれたシオリだけが嫌な顔をしていた。  踏み込んで欲しくない手の時に踏み込んで来る。カオリは見事に相手の注文の逆を行ったのであった。
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