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16巡目
◉最後の罠
一二三四六七八九２３３３４ 伍ツモ
『ツモりました！財前！すばらしい！！』
『トップ逆転しましたねー！さあ、裏ドラは？』
（（（せめて裏は乗らないで！！！）））
カオリの豪快なツモアガリを見て3人がそれを同時に念じた。そう、師団名人戦にアガリやめはない。4000オールならここでミサトを2800点差まくったわけだがそれで「はい優勝おめでとう」と終わるものではないのだ。だからせめて4000オール止まりにして欲しかった。6000オールになるのはキツイ。
裏ドラ
西
「4000オール」
3人の祈りは届いてなんとか4000オール止まりだった。
（よし、2800点差。そのための前局のダマテンよ）とミサトは思った。
オーラス一本場 ドラ９
左田ジュンコは最後の可能性に賭けて国士無双をやることにした。そこには罠も迷彩も何もない。バレて元々の特攻だった。しかし…。
左田手牌
一九①６東東西西北白発中中 ⑨ツモ
左田
打６
「ポン」
『鳴いた！白山シオリ叩きました！』
『白山の手。倍満級まで育つ可能性はありますからね』
カオリ手牌
二二三四四伍伍⑤⑤⑥⑦⑧南 伍ツモ
『さあ財前はテンパイです！』
打南
「ポン」
『あーーーっと！財前の捨てた南を白山が鳴いた！これ2枚目ですね』
『はい、ですので左田の国士は不可能となりました！』
（くっそーーーいいとこまで行ったのにお終いかー。あと南と１と９だけだったのにな！まあ、９は白山が固めてそうだけどね…）
そう、白山シオリは倍満ツモ条件であるのに６をポンしたと言うことは役ホンイツトイトイドラ3が本命であり９はもちろん１を引く可能性も低そうな感じはしていた。
白山手牌
１１３３９９９（南南南）（６６６）
アガリは出ぬまま局は進み15巡目ーー
井川ミサトは絶体絶命だった。
ミサト手牌
一三四六③⑤⑦⑨２２２８９ ①ツモ
（ああ、私はなんでカオリと決勝まで当たりたくないなんて思ってしまったんだろう。おかげで願いが叶ってしまった。最悪な形で。そうよ、カオリの成長速度は凄まじいと分かっていたのに。それなら少しでも早くカオリと当たりたいと思わなければダメだったんだ。成長する前に叩かないといけなかった。なんで誰かにそれをやってもらえたらなんて甘えた思考になってしまったんだろう。私らしくもなかった。ダメだ、これは張らない。張りようがない。カオリに最後伏せられて負ける。……それなら！）
「…」
打９
『井川ミサト！ドラを切りました！これは！」
『テンパイブラフですね。それも渾身の、最上級の…井川しかり白山しかりどちらの選手も頂しか見ていないんですよ』
『どういうことですか？』
『つまり、白山への倍満放銃で3着転落の危険を孕んだ９を15巡目に放ったことでまず確実にここはテンパイしているぞと財前に誤情報を井川は送りました』
『テンパイノーテンで逆転するからそうなると財前は伏せられない』
『実際には井川はノーテンですから財前は伏せれば優勝しますが、あの９切りでそれが出来ない状態にしたわけです』
『あの、守備の化身とも言える『護りのミサト』がそんな捨て身の選択をしたことが熱いですね』
『ええ、まさしく捨て身の罠。…そして最後の罠です！』
『そして、南ホンイツトイトイドラ3の白山ですが、あの９をミンカンして怒涛の攻めでもいいんですが…そうした時、もしリンシャンハイでツモってしまったら困る』
『そうか！包だ』
『白山の優勝条件はあくまで倍満ツモです。カンしてリンシャンツモをすることを良しとしない。それだって準優勝なのにです！』
『新ドラ開くって言っても3枚乗らないと三倍満にはなりませんからね。優勝狙いなら９のカンはスルー…と』
白山
最後のツモ番
ツモ
西
（くっ…）
白山シオリも優勝だけを目指して勝ちに行ったがツモアガれず、流局ーーー
（ここだ！私はテンパイだけど。ミサトの９切りをどう見るか…）
「テンパイノーテンは親から順です。財前選手から行って下さい」と立会人に促される。
「ごめんなさい。…ちょっとだけいいですか」
（ミサトは９切りの前に少しの間があった。考えてから勝負したのだろうが、それがあやしい。本当にテンパイしているならミサトのことだ、まずノータイムで行くだろう。私達のプロ意識はオールorナッシング。優勝しか価値はないの精神なのだから。だとしたらあの間は演技。それっぽく見せるための演出だ。うん、そう考えると腑に落ちる。ましてミサトは私より麻雀が明らかに上手い。もう一局やれば勝つ確率が高いのは私じゃなくてミサトになるだろう。ここで騙されて連荘なんてしたらダメだ）
ドックンドックンドックンドックン
（信じろ、ミサトを信じたら結論はひとつしかない！）
《それでいいんですね？》
（うん、信じてるから）
「ノーテン」
『伏せた！！財前カオリ！伏せました！井川ミサトの渾身のブラフを見切ったーーー！！』
『よく見抜きました！ここでノーテンを選べるのは相当な勝負師ですよ！』
『第35期師団名人位は財前カオリ選手！！』
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