新しい魔法薬

9/19
51人が本棚に入れています
本棚に追加
/303ページ
「騎士様、大公様のお屋敷までお願いします」 「おや、今日はお早いのですね」 「はい。ちょっと大公様に相談したいことができましたので」  わずかに驚いたような表情を見せたミラドールさんにそう返すと、彼は何も言わずに頷き僕の手を取る。 「なるほど。でしたら、少々速度を出します。お手を離されませんようお気を付けください」 「ありがとうございます。よろしくお願いします」  ミラドールさんの提案と注意に感謝しながら、彼の手を握り返して身構える。  それを確認したらしいミラドールさんは僕を見て再度頷き、大きく尾ヒレを振るった。  体が引っ張られ、一瞬だけ呼吸が詰まる。  それもすぐに慣れ、周囲の景色はものすごいスピードで視界の端へと流れていった。  あっという間に大公邸が見え、ミラドールさんは徐々に減速する。  そして門の前で止まり、そっと僕から手を離した。 「着きましたよ、マッキャロル殿」 「あ、ありがとうございます。本当に速かったですね……」 「ええ、鍛えておりますので」  僕の言葉にミラドールさんは自信に満ちた顔で言い、それから表情を引き締めピシリと姿勢を正す。 「それでは、自分はこれで失礼いたします」 「ありがとうございました、騎士様。また明日もよろしくお願いします」  そう別れの挨拶を交わし、ミラドールさんに見送られながら門をくぐった。 「すみません、大公様にお話ししたいことがあるのですが、お時間はありますか?」 「少々お待ちください。確認してまいります」  迎えに来てくれた使用人と前庭を進みながらそう聞くと、使用人はそう言って僕を客間へと通す。 (やっぱり忙しいんだろうな……)  そんなことを思いながらしばらく待っていると、不意にドアがノックされた。 「俺だ」  短い声が言う。 「あ、ど、どうぞ……?」  僕が答えていいのか分からないけれど、とりあえずそう返すと扉が開かれ、ネルソンさんが姿を見せた。  
/303ページ

最初のコメントを投稿しよう!