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「っぎいぃッ!?」
唐突な痛みに意識が覚醒し、目の前がチカチカと明滅する。
「……うるさいな。誰かコレの口を塞げ」
伯父上の冷えた声が言い、僕の口に布が押し込まれた。
「――よし。次」
淡々とした声が言い、少し遅れて種類の違う痛みが走る。
僕の声は布に消され、口からこぼれることはない。
「――次だ」
痛みは種類を変え、何度も何度も僕を襲った。
内臓がぐちゃぐちゃになる感覚がするのは錯覚だろうか。
なぜか鉄の味がするのは幻覚だろうか。
周りを見る余裕なんてない。
ここがどこで、何が起こっているのかも分からないまま――僕はただ恐怖に泣き、涎を垂らしながら激痛からの解放を願った。
「――次は切断して――」
「――おい、雷の魔石を用意し――」
「――火の魔石も試してみよう――」
あまりの激痛に脳を直接揺さぶられたような感覚に陥り、周囲の音は断片的にしか理解できない。
死にそうなほどの激痛を受け、しかし暴れたくても思うように体が動かない。動かせているのかも分からない。
「――ここまでやって、まだ意識が――」
「――すごいな、伝承通り――」
そんな中、ふと感嘆と恐怖の声を聞いた気がした。
それから新たに続く痛みが無いことに気づき、震える口から息が漏れる。
(……ようやく、終わった……?)
未だ残響はあるものの、今までの激痛に比べたら大したものではない。
ぼんやりとした頭のまま、僕はゆっくりと目を開けた。
少しずつ鮮明になっていく景色の中には、四人ほどの人影があった。
にじむ視界では顔の判別がつかないけれど、誰もが僕を観察するように見下ろしている。
「――素晴らしい。だが、痛覚が残るのはな……」
そのうちの誰かがつぶやくように言い、僕の口から布を取った。
「やはり実験して正解だったな」
聞き覚えのある冷たい声はそう言葉を続け、ニンマリと口角を吊り上げる。
「喜べ、ヴァーミリオン。お前は不老不死となったのだ」
嗤いながらそう言った伯父上の顔は、絶対に忘れられないだろう。
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