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目が覚めたのはすっかり首がくっついてからで、何の気なしに起き上がってから首を切られていたことを思い出した。
(……すごいな。ちゃんと元に戻った)
首をさすり、傷も何も残ってないことを確認してからふと気づく。
(なんだか、妙に暑いな……)
窓のない地下だから空気がこもってしまったのだろうか。
(上の扉を開けたらマシになるかな)
そう考え、階段を上がろうと見上げた瞬間――僕の思考は真っ白になった。
扉があった場所には四角い穴が空き、その先には赤々と炎が踊っている。
実験室が燃えているのだ。
「な……何か消火するものっ!」
消火手段を探すべく階段を駆け上がり、燃え盛る実験室を抜けて廊下に出る。
廊下も、廊下に並ぶ扉も煙を吐きながら燃えていた。
実験室どころじゃない。屋敷が丸ごと燃えている。
(こんなの、僕一人じゃ消火しきれない!)
皮膚が焼け焦げるほど熱いのに、絶望は僕の背筋を凍らせた。
食いしばった歯の隙間から声が漏れる。
(痛い……!)
体中が熱く焼けただれ、動かすたびに痛みが走り、肉が引きちぎれる。
(苦しい……!)
少ない酸素はどう考えても足らず、それでもと吸い込んだ空気が肺を焼く。
たまらず咳き込むと、赤黒い血が床に散った。
(怖い……!)
どこを見ても炎で、どこからもなにも聞こえない。
(……どうして)
どうしてこんなことになってしまったのか。
僕が、何をしたというんだ。
(もう、嫌だ……)
痛いのも、怖いのも、苦しいのも。
(――もう、疲れた……)
まぶたを閉じた瞬間、自分の身体がどこかへ落ちていくような感覚がした。
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