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「……あ、れ?」
突然顔に触れた柔らかい感触に目を開けると、知らない部屋のベッドにうつ伏せになっていた。
起き上がって確認するも、この部屋に見覚えはない。
扉は一つだけ。本棚とクローゼット、デスク、そしてベッドのある、僕には贅沢すぎる部屋だ。
(でも僕はマッキャロル伯爵邸の廊下で倒れたはずなのに……)
意識を失っているうちに運ばれたのだとしても、ベッドに付いた血痕と火傷の具合からしてここへ来たのはついさっき。
それなのに、床には足跡どころか血痕すら付いていない。
まるで伯爵邸から直接このベッドへ落ちたような状況だ。
どういうことだろうと疑問に思いつつ、ベッドに体を預け回復を待つ。
今はまだ、痛みが酷くて動き回れそうにない。
痛みが和らぐのを待ちながら、改めて部屋を眺める。
本棚には分厚い本がいくつも収められ、年季の入ったクローゼットやデスクはひと目見て質のいいものだと分かった。
貴族の部屋にしては少し狭い気がするけど、ある程度財力のある人間の部屋なのは確かだ。
(誰の部屋なんだろう……?)
まさかマッキャロル家に関係のある場所なのだろうか。
そんなことを考えていると、不意に扉が軋んだ。
「オヤ、いらっしゃいマセ」
入ってきたのは、やや発音の怪しい喋り方をする長身の男だった。
「……あなたは、誰ですか?」
「ワタクシめは魔動人形の八番目でございマス」
そう名乗り、彼は袖をまくって見せた。
硬質の腕には薄く光る回路が引かれている。
「そ、その腕は、どういう……!?」
「オヤ、魔動人形をご存じありませンカ。簡単に言エバ、魔力で動く人形でスヨ」
どう見ても人間にしか見えないけれど、どうやらエストラさんは人間ではないらしい。
(魔力で動く人形なんて、初めて見た……)
もしかしたら貴族の間では常識なのだろうか。しかし僕には貴族の知識がない。
ひとまずエストラさんのことは端によけ、抱えていた疑問を投げかける。
「エストラさんは、ここがどういう部屋か知っていますか?」
「ハイ。この部屋はマーヴィン・マッキャロル様の隠れ家デス」
「……マーヴィン・マッキャロル!?」
マーヴィン・マッキャロルは僕の曽祖父にあたる人物だ。
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