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「話があると聞いたが」
「はい。研究のことで相談したいことがあります」
ネルソンさんの問いにそう答え、さっそく本題に入る。
「今の研究にレイディヴァトの食材が必要になる可能性が出てきましたので、その用意をお願いできないでしょうか」
なるべく簡潔にそう話すと、ネルソンさんはわずかに表情を動かした。
「食材、というのは?」
「海藻と貝と、もしかしたら魚も必要になるかもしれません」
「希望の種はあるか?」
「今のところありませんけど、できるだけ種類が多いとありがたいです」
不思議そうに問うネルソンさんにそう答えると、すぐに頷き言う。
「分かった。用意させよう」
「ありがとうございます」
そのありがたい言葉に感謝を伝え、軽く研究の進捗を報告した。
今はまだ思わしい結果が出ていないけれど、わずかながら希望は見えてきている。
そう伝えると、ネルソンさんは感心したように目を細めた。
「しかし、食材に魔法薬の素材の可能性を見るとはな」
本当にその通りである。
「これもトリシアさんの助言のおかげです」
「そうか」
僕の返答にネルソンさんは満足げにそう言い、それから席を立った。
「俺はそろそろ仕事に戻る」
「分かりました。お忙しいところ、ありがとうございました」
「構わない」
退室するネルソンさんを見送り、僕も客間から出て使用人に連れられて借りている部屋へと戻った。
ソファーで力を抜き、大きく息をつく。
とりあえずこれで必要なものは手に入るだろうし、研究にも進展が見込めそうだ。
……この国の食材にはあまり詳しくないので、時間はかかりそうではあるけれど。
何にしても、やることは今までと変わらない。
とにかく試して、分析してもらう。
新たな素材との出会いを願いながら、僕は今日の気づきを記録に残した。
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