新しい魔法薬

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「ああいう食材を初めに食べようとした人って、どういう考え方をしてたんでしょうね」 「……おかげでおいしく安全に食べられるからいいんですけどね」  そんな風に雑談しながら、背中を伸ばして力を抜いた。 「さて、そろそろ作業に戻りましょうか」 「はいっ! 頑張ります!」  そう声をかけ、二箱目の確認に取りかかる。  作業は順調に進み、何とか今日中にすべての食材の確認が終わった。  残念ながらジュースになるようなものはなかったけれど、魔法薬に向いていそうな食材は全体の2割ほどあった。  新しい材料として充分期待できる量だ。  それらを新たに箱へ収め、ふっと息をつく。 「トリシアさん、ありがとうございます。おかげで研究が進みそうです」  そう伝えると、トリシアさんは少し恥ずかしそうに目を逸らした。 「いえっ、そんな、あたしはただ他のジュースが飲んでみたかっただけで……」 「それでも、僕が助けられたのは事実ですから」  動機がどうであれ、彼女が新しい素材の可能性を教えてくれたからこそ希望の光が見えてきたのである。  さらには魔力の付与を手伝ってくれたおかげで今日中に確認を終わらせられたのだし、僕としては感謝してもしきれないほどだ。 「……さて、今日はこの辺りで終わりにしましょうか。今日もお疲れさまでした」 「はいっ。ヴァン先生もお疲れさまでした!」  互いにねぎらい、片づけを済ませて帰り支度をする。 「たぶんまた新しい食材を用意してもらえると思うんですけど、そちらのほうの確認も手伝ってもらえますか?」 「もちろんです! いい練習になりますし、どんと来い! です!」 「ありがとうございます。助かります」  そしてトリシアさんの頼もしい言葉に感謝しつつ、彼女の後ろ姿を見送った。  
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