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「どうして僕がそんな場所に……!?」
「ワタクシめには分かりかねマス」
エストラさんは肩をすくめてそう答え、それから考え込むように顎を触る。
人形とは思えない、人間臭い動作だ。
「……もしや、アナタ様はマッキャロル家の人間でしょウカ?」
「あ、はい。一応は……」
「でしタラ、おそらくマッキャロル伯爵邸の隠し転移陣を通ってきたのでしョウ」
「そう、なんでしょうか……?」
そうは言われても、あの時はろくに周囲を見ていなかったので分からない。
「なんでアレ、アナタ様がマッキャロル家の人間であるなラバ、ワタクシめはアナタ様のお世話をするのみデス」
エストラさんは話題を切り替えるように言い、従者のように僕へ頭を下げた。
「失礼なガラ、アナタ様のお名前をお聞きしてもよろしいでしょウカ?」
「あ、す、すみません、自己紹介が遅れました……」
ベッドから降り、姿勢を正して息を吸う。
「僕はヴァーミリオンといいます」
「ヴァーミリオン様、改めてよろしくお願いいたしマス」
「は、はい。よろしくお願いします」
頭を下げるエストラさんにつられて頭を下げようとした瞬間、エストラさんに肩を掴まれ止められた。
何事かと見れば彼は肩から手を離し、ピシリと姿勢を正す。
「それデハ、マーヴィン様の命令に従い、この隠れ家をヴァーミリオン様のものとしマス」
「えっ、どっ、どういうことですか……!?」
聞けば、どこからかカチリと音がした。
「『もしも私の縁のものがここへ来た時は、この隠れ家の全てをその者に譲り渡し、動力尽きるまでその者に仕えよ。これはマーヴィン・マッキャロルからの命令である』」
突然知らない声がそう宣言し、またカチリと鳴った。
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