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食事を終え再び書斎を探し回り……ようやく魔法薬学の入門書が見つかった。
入門書は、書斎ではなく寝室の本棚にあったのだ。
……ついでとばかりに、魔術の初級本も。
探し疲れて戻った寝室で見つけた時は思わず脱力してしまった。
入門書を見つけてからは、エストラさんが夕食を運んでくるまでずっと読んでいた。
そして夕食を終えた後も本を開き、読み込んで理解を深めていく。
今まで学ばせてもらえなかったことを知れる喜びも当然あるけれど、それだけではない。
マッキャロル伯爵子息でも、人間でもなくなったけれど……それでも、魔法薬学を学び、人のために在りたいと思う心は残っているのだ。
「……ヴァン様、そろそろおやすみになられてはいかがでスカ?」
「あれ? もうそんな時間ですか」
エストラさんに声をかけられ、意識を本から離す。
よほど夢中になって読み耽っていたらしい。
「今日は動き回りましタシ、お疲れでしョウ。ゆっくり体を休めてくださいマセ」
「そうですね。そろそろ寝ます……」
支度を済ませ、ベッドに潜り込む。ふかふかのベッドは居心地がよく……
(お、落ち着かない……!)
……居心地がよすぎて全然眠れそうになかった。
起きていると色々なことを考えてしまう。
たとえば伯父上のこと。たとえばマッキャロル伯爵邸のこと、たとえば――実親のこと。
父上は、母上は……見も知らぬ弟か妹は、もう伯爵邸で起きた事件を知っただろうか。
伯父上や……僕の死を、知ってしまっただろうか。
痛む胸を押さえ、唇を噛み締める。
家族のことを思うと、八年前に押さえ込んだ感情があふれ出しそうになる。
もう戻れないのに、まだ未練がましく戻りたいと心が軋むのだ。
……だからこそ、家族のことを思うのも、これで最後にしよう。
エリオットとアリサの子ヴァーミリオンは、マッキャロル伯爵の子息として燃え盛る伯爵邸で死んだ。
ここにいるのはヴァンと名乗る、不老不死の化け物だ。
ヴァンとして、化け物として――それでも、魔法薬師を目指す者として。
(……まずは、魔法薬を作れるようになろう)
にじんだ視界を手の甲で拭い、僕は寝返りを打った。
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