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授業のない日はいつもの調薬室で研究を進めたり、授業の感想や今後の方針などを話し合う。
といってもしばらくは四人ともウミヘビ毒の解毒薬を練習しているだろうから、話し合うのは生徒たちの進度についてだ。
「みなさん授業のない日も練習しているでしょうから、次の授業ではすっかり上達してるでしょうね」
実際、トリシアさんもそんな感じだったから簡単に予想できる。
「そうですね! 授業中の熱意もすごいですし、あたしなんかすぐに追い抜かれちゃいそうです」
「分かります分かります。追いつかれる、っていう焦りもありますけど、それ以上に抜かされるのが楽しみなんですよね」
「ヴァン先生、めちゃくちゃ嬉しそうじゃないですか……」
僕の言葉にトリシアさんは呆れたように言い、それからふと表情を変えた。
「そうしたら、次の魔法薬はどれにするんですか? サンゴ毒の解毒薬ですか?」
「いえ、サンゴ毒の解毒薬はちょっと複雑なので次はカサゴ毒の解毒薬にするつもりです」
といっても誤差のようなものだけど、トリシアさんは納得したように頷いた。
「それがいいと思います。あたしは開発順に練習しましたけど、カサゴ毒のほうが楽だなって思いましたもん」
「そんなに違いました?」
「けっこう違いますよ。製法の文字数って本当に難易度の目安になるんだなあ、って実感したくらいです」
「そ、そんなにですか……」
ちなみにカサゴ毒の解毒薬は石板の片面半分ほどで、サンゴ毒の解毒薬は片面全部である。
石板の大きさや文字の密度の違いもあるから正確な比較はしていないけれど、見た限りでは確かにサンゴ毒の解毒薬のほうが文字が多く見える。
(それでも、あんまり差はないように思えるんだけどなあ……)
たぶんこれは僕が開発者だからだろう。
もしくはこれよりも複雑な薬を知っているからか。
何にしても、次の課題はカサゴ毒の解毒薬でよさそうだ。
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