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「お買い上げ、ありがとうございます」
「はい。選んでくださってありがとうございました。また見に来ます」
「ええ、いつでも気軽に来てください」
頭を下げ、それから店を出る。
「――次は俺のおすすめですね! 少し遠いですが、ついてきてください!」
そう張り切るシリルさんに続き、さらに商店街から離れていく。
そしてだんだんと建物が少なくなり、ぽつぽつと明かりも少なくなってきたところでシリルさんは速度をゆるめ、ある建物を指した。
「俺のおすすめはここです!」
見たところ、建物は周囲のものと同じような作りをしている。
「……民家、ですか?」
「ただの民家じゃないですよ!」
トリシアさんの疑問にそう答え、シリルさんはその建物の扉を開けた。
「ばーちゃん、連れてきたぞ!」
「そんな大声出さんでも聞こえとるよ」
シリルさんが声を張ると、小柄な老人が呆れたように言いながら姿を見せる。
「まったく、あんたは昔っから声がでっかくてかなわんねえ」
「あはは、ごめんごめん」
老人に小言を言われながらもシリルさんはニコニコと笑みを浮かべ、それから僕たちを振り返った。
「このばーちゃんはシーラさん。俺の祖母で、ロビス試験場の創設者です」
「え――えええっ!?」
サラリと衝撃的な紹介をし、シリルさんはシーラさんのほうへ向き直る。
「ばーちゃん、この人たちが前に言った魔法薬学の先生と生徒仲間のヴァーミリオンさんとトリシアさんとノルドくんだよ」
「はい、はい、初めまして。私はシーラ、そこの坊やの祖母です」
そこの坊や、と言いながらシーラさんはシリルさんを指した。
「……あ、えっと、初めまして。魔法薬師のヴァーミリオンです」
何とか衝撃から回復しそう名乗ると、シーラさんは柔らかに微笑み頷く。
「うふふ、シリルから聞いていますよ。熱心な先生なんですってねえ」
「あ、ありがとうございます」
いったいどのように話を聞いたのか、シーラさんは「お若いのに立派ですねえ」と言った。
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