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忙しい一日が終わり、与えられた部屋へと戻る。
ガラクタばかりが詰め込まれた、ゴミ箱のようなここが僕に与えられた部屋だ。
元々物置として使われていた部屋へ何の用意もなく放り込まれたのは今でも覚えている。
「この中のものは好きに使え」
そうは言われたけれど、僕には割れた瓶の使い道など知らないし、書き損じの羊皮紙の使い道も分からない。
初めはどうしようかと思ったけど、「勝手に触るな」とは言われていないと開き直り、ガラクタを壁際にどかしてどうにか隙間を作った。
それから八年間、僕はこの隙間で休み、寝起きしている。
いつものように疲れた体を隙間へ滑り込ませ、ボロボロの布に包まった。
元々ベッドカーテンだったそれは毛布ですらないけれど、ないよりはずっとマシだ。
そのまま目を閉じ、遠い地の両親を思い浮かべる。
健康に過ごしているだろうか。母上のお腹の中にいた弟か妹は、元気に成長しているだろうか。
(……帰りたいなぁ)
なんて、絶対に許されないけれど。
(……望むだけなら、誰にも迷惑かからないよね?)
この望みが誰にも漏れていないことを祈りながら、眠ろうと深く息を吸う。
「――出て来い! このグズ!」
しかし部屋の外から飛んできた怒声に思わず呼吸が止まった。
ゆっくりと息を吐き、扉を開ける。
「どうなさいましたか、旦那様」
「黙って来い!」
怒声の主――伯父上はそれだけを言い、不機嫌を隠そうともせずに廊下を進んでいく。
急いでその後を追うと、たどり着いたのは実験室だった。
(入っても、いいのかな……?)
今まで頑なに僕を入れなかった部屋だ。
不安になって足を止めると、すかさず怒声が飛んできた。
「早く来いノロマ!」
「も、申し訳ありません……!」
慌てて後を追い、実験室に入る。
室内は見たこともない器具とガラス瓶が並び、また窓が少ないこともあって不気味な雰囲気が漂っていた。
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