56人が本棚に入れています
本棚に追加
「ウロウロするな! 早く来い!」
言われるがまま伯父上の後を歩くと、伯父上は部屋の奥の扉を開ける。
その先は階段になっており、地下へ繋がっているのが分かった。
嫌な予感が背筋を冷やす。
(僕、何をされるんだろう……)
震え出した腕を押さえ、伯父上の後に続いて階段を降りる。
意外と短い階段の先では、ずらりと並ぶ鉄格子が待ち構えていた。
牢屋だ。
「今からここがお前の部屋だ」
言うと同時に背中を蹴り飛ばされ、牢の中へと転がされる。
そしてガシャンという音が鳴り響き、鍵がかけられた。
「ど、どういうことですかっ!?」
「黙れ!! 誰が発言を許可した!?」
石造りの空間に怒声が反響し、普段よりも恐ろしいものに聞こえる。
恐怖のあまり体から力が抜け、何も喋れないまま戻っていく伯父上を見送った。
足音が消え、ぽつんと残された魔石ランプ一つだけが薄暗い地下牢をぼんやりと照らしている。
(……僕は、こんなところに入れられるだけのことをしたんだろうか)
驚いたことに涙は出なかった。
それでも、胸の辺りが締め付けられるような感覚はある。
(僕は、こんなところに入れてもいいと思える程度の存在なのか……)
これでは本当に何のために養子になったのか分からない。
そもそも、ちゃんと養子になっているのかも分からない。
(これが夢だったらよかったのに……)
ぐるぐると渦巻く思考に振り回されながら、冷たい牢の中で膝を抱えて目を閉じる。
(……疲れた)
考えるのをやめたい。今は休ませてほしい。
浮かんでくる疑問と疑念から目を逸らし、今度こそ眠るために深く息を吸った。
最初のコメントを投稿しよう!