三ヶ月と少し

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 可愛らしいあの子とは去年二人して同じクラスだった。弓道部で袴が良く似合う彼女は、背が少し高めでスラッとしていて、可愛くて、お淑やかで、だからといって嫌味っぽくない、良く言えば博愛主義者的な側面を持っていた。それは一方で、浅く広くな付き合い方をしていて本心の見えない、合理主義者的な側面でもあったかもしれないけれど。    帰り道、三人で並んで帰った日。途中で二人と別れ、その場で信号を待っていた。ふと横に目を遣れば、視線の先には仲良く話す二人の後ろ姿があるばかり。それは一日二日の話ではなかったが、それを目にする度に、えもいわれぬ感情が自分の中で渦巻くのを感じた。  彼の思いを知ってから初めて見た、二人の話す姿。こちらが近くを通ろうと隣の席に座ろうと、話しかけなんてしないくせに。やっぱり彼女には他愛のない話を持ちかけて楽しそうにしている。  結局のところ、彼が彼女に思いを寄せたきっかけはさて置けば、彼女の様子に関わらず彼は彼女に焦がれるのだ。    彼女は、恋愛ごとに対して興味がないと言っていた。気になる人がいるのかと聞くと、適当な冗談で躱された。否定しないあたり、真意は判りかねる。それでも嫌な予感が胸を、頭を過るのは避けられなかった。  二人が結ばれないように、そんなことを願った。自分の人の悪さに嫌気がさした。これも人間らしさなのだと無意味な学びを得た。彼女の発言を鵜呑みにして自分を甘やかしたかった。  苦しさだけが、常に心を満たしていた。
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