0人が本棚に入れています
本棚に追加
百合子が転校して来て一か月程経った頃から、雅美が学校を休みがちになった。
「雅美は、どこか具合が悪いの?」三日続けて雅美が休んだ時、楓子は百合子に尋ねた。
以前は、雅美と一緒に学校から帰っていたが、最近は雅美が百合子と帰りたがっていたため、雅美の様子がわからない
「さあ」百合子は微笑みながら、愛らしく首を傾げた。
「風邪ひいたの?」楓子は心配になって、雅美に電話した。
「ううん。なんか身体が怠くって」
「この頃元気ないね。雅美らしくないよ」
「そうだね。今、何処?」
「学校からの帰り道」
「百合子は近くにいる?」
「ううん」
「あの子、どう思う?」
「相変わらず奇麗だよ。ちょっと血色も良くなってきたみたい。何よ、雅美の方がよく知っているじゃない」
「そうなんだけど・・・」
「何かあったの?」
「あのね。はっきりとは分からないんだけど、影がね・・・」電話口で雅美がブルッと震えたような気配がした。
「え? 影って?」
「あ、いや、何でもないの。忘れて。じゃあね。電話ありがと」雅美は、怯えたような声で、早口で喋ると電話を一方的に切った。
最初のコメントを投稿しよう!