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この山の脇を小さな川が流れていて、吊り橋が架かっている。三人はこの吊り橋を目指して、山を登って行った。
ふと、悲鳴が聞こえた。
「キャー、やめて」
雅美の声のようだった。
見上げると、誰かが吊り橋の上に倒れている。そして、その上に別の人間が覆いかぶさっている。
三人は一目散に、吊り橋に向かって走って行った。
「大丈夫か」誠が叫びながら真っ先に駆け付けた。
倒れていたのは、雅美だった。顔からは殆ど血の気が失われており、頸から少し血を滴らせていた。
その傍らには、百合子が立っていた。何時もより更に赤い唇から血を滴らせながら、三人を睨みつけている。目は獲物を狙う獣のようにギラギラしていた。
「雅美に何をしたんだ」誠が怒鳴ると、百合子は唸りながら誠に跳びかかった。誠と百合子が掴み合って戦ったため、吊り橋が大きく揺れ二人の身体が橋から落ちそうになった。
誠は土壇場で吊り橋のロープを掴んで、何とか橋から落ちずに残ったが、百合子は「ひぇーぃ」と、叫びとも悲鳴とも付かない声を残して、吊り橋から落ちていった。
「雅美、大丈夫?」楓子と春奈は、雅美に駆け寄った。
身体を揺すっても返事はなかった。雅美は、すでに息絶えていた。
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