銀のお守り

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雅美は失血死だった。倒れていた辺りにはそれ程大量の血液が流れていなかったため、原因について警察は首を捻るばかりだった。   百合子の死体は見つからなかった。吊り橋の高さは30m余りあり、その下は大きな岩がゴロゴロしているため、落ちれば生存できる可能性はまずない。岩には血痕もついておらず、転落事故の跡は全く見られなかった。 川の水はチョロチョロ流れる程度の涸川で、中学生の身体を下流に押し流すとは考えられない。 楓子、誠、春奈の三人は何度も状況を説明させられたが、結局事件の解明には至らなかった。不思議なことばかりで、大人達は頭を抱えていた。 そして、それらとは別に楓子には心に引っ掛かることがあったが、悲嘆にくれる雅美の両親を見て何も言えなかった。『見間違いだったんだわ』と何度も自分に言い聞かせ続けて、そのまま時が流れてしまった。
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