銀のお守り

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楓子は、凍りついた。 二十年もの間心の中でずっと封印していたものが不意に意識の表層に浮かび上がった。そして、それが陽菜の言葉とピッタリ合わさった。 『そうだわ、影が無かったんだ。あの時、吊り橋の上で誠と百合子が取っ組み合っていた時、百合子にだけ影が無かった』 翌日、楓子は陽菜に言った。 「ねえ、陽菜。今日は保育園お休みしようか」 「えー、なんで」 「なんでも。ママのお願い」 「じゃあ、陽菜もお願いしていい?」 「なあに」 「今日はママのと同じペンダントしていい?」 「いいわよ」 「ママとお揃い、嬉しいな」 昔、親友とお揃いでしていた銀のペンダント。あの時、自分も”お揃い”が嬉しかったのを懐かしく思い出した。 楓子が二階のベランダで洗濯物を干し終わって、リビングに降りると陽菜がいない。慌てて家中を探し、通りにも出て探した。 「陽菜ぁ、陽菜ちゃん、ひなぁ~」 斜め向かいの奥さんが家の前の道を掃いていた。 「陽菜を見ませんでした?」 「ええ、見ましたよ。若い女の方と一緒に歩いていました。保育園に連れて行くとおっしゃっていましたけど・・・。奥さんはご存じなかったんですか?」 「そうですか、有難うございます」
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