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楓子は、保育園に飛んで行った。
「陽菜は来ていますか?」
「いいえ。今日はお休みとの連絡頂いてますよね」
「ええ、でも保育園の先生が連れて行かれたんです」
「そんなこと、あり得ませんわ。誰です?」
「お名前は分かりません」
壁には、保育園の職員の顔写真が一人ずつ貼ってあった。順番に見ていって突然息が止まった。
『百合子』
まさしく、二十年前の九条百合子が微笑んでいた。
「九条・・・ではなく、この先生は今いらっしゃいますか?」
「栗林先生ですね。陽菜ちゃんの担任です。朝一度園に来たのですが、突然何処かに行ってしまって」
「この人が、陽菜を連れて行ったんです。探して下さい。早くっ」
楓子は我知らず叫んでいた。
『いったい陽菜は何処にいるの?』
『どうか無事にいて』
中学生だったあの時の恐怖を思い出し、気も狂わんばかりに付近を探し回った。
この辺りで僅かに残っていた雑木林の近くに来た。
林の周りには人が入り込むのを防ぐために、木の杭とロープで囲いがしてあったが、一部が無理に壊されている。
楓子は、そこから林の中に入って行った。
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