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「好きなことをしてる三枝さんは、すごく生き生きして良いと思う。そんな恋が出来るといいね」  建物が近付くにつれ、深澤の表情がどこか照れ臭そうに赤くなっていることに気付く。そして今日会ってからの彼の言葉を思い起こし、次第に淡い予感を感じ始めた。 「あ、あの……奇特な人って、すぐそばにいたりするかな……?」 「……いるよ、すぐそばに」 「もしかしたらその人となら……ドライブもライブも楽しめたりする……?」 「うん、きっとね」  しかし深澤は日菜乃の方を見ようとはしない。 「……はっきり言ってくれたらいいのに……」  日菜乃がポツリと呟くと、深澤は突然足を止めた。 「……まさかこんな展開になるとは思わなかったんだよ……ちょっとは心の準備とかさせてくれ」  頭を掻きむしりながら俯く深澤を見ながら、日菜乃は動悸が激しくなる。それは今まで知っていた物静かで感情を面に出さない深澤ではなかった。  照れて挙動不審になるなんて、可愛いすぎる……日菜乃は初めて見る姿に胸がいっぱいになり、繋いでいた手とは反対の手で彼の腕に触れる。  先輩への想いが完全に吹っ切れたわけじゃない。でも次の恋への第一歩は、すぐに踏み出せそうだった。  空には満天の星が輝く。自分自身を大切にしたら、見えなかったものが見え始めた。  私を失くさない恋がしたい。それが苦しい恋から私を解き放つ理由。 「帰りのドライブまでにはちゃんと言うからさ」  日菜乃は頬が緩んでしまう。こんなに嬉しい気持ちになるのは久しぶりだった。 「じゃあ帰りは深澤さんの好きな音楽を聞かせて」  ようやく日菜乃の方へ顔を向けた深澤は、同じように頬を緩ませていた。  あぁ、きっとすぐだわ……ドキドキが収まらない胸をぎゅっと掴んで日菜乃は確信する。  私の心はすぐにあなたでいっぱいになるに違いない。だってもうこんなにも惹かれ始めてる。
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