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「……三枝さんは彼氏が欲しいの? それとも恋がしたいの?」
深澤の質問に、日菜乃はキョトンとした顔になる。
「そんなの両方に決まってるじゃない」
「先輩をまだ想い続けるの?」
「……しばらくはまだ先輩が好きかも。だってそんな簡単に嫌いになれないもん。でも……新しい恋をするなら先輩じゃない人がいいかな。ちゃんと私を見てくれて、お互いを大切に想える人と恋愛がしたい」
一方通行な恋は切なくて苦しい。この二年、満たされない気持ちを抱えて過ごしてきた。だからこそ、次は愛情を返してくれる人と恋がしたいと心から思った。
「じゃあさ、次の恋は今回とは逆の始め方をしてみたら?」
「逆?」
「そう。ずっとその人に片思いだったんでしょ? だったら次は、三枝さんを好きだって男と付き合ってみたら?」
深澤の言葉に日菜乃は苦笑いをする。
「確かにねぇ……でも私を好きだなんて、そんな奇特な人っているかなぁ」
今まで告白なんてされたことはないし、されたとしてもちゃんと自分が好きになれるか自信がなかった。
「もしいたらどうする?」
日菜乃はドキッとした。自分の手の上に、突然深澤が手を重ねてきたのだ。驚いて目をパチパチと瞬き、恥ずかしくて口をキュッと結ぶ。
「あのっ……深澤さん……? こ、これは一体……」
どうすることも出来ずに狼狽える日菜乃の手を、深澤はそっと握った。
「さぁ、なんだろうね」
「さあって……」
「でも、自分で思っている以上に三枝さんを見ていたことに気付いた」
「えっ……」
深澤の言葉に困惑した日菜子は思わず彼の顔を見ようとしたが、何故か深澤は顔を背けてしまう。それからスッと立ち上がると、食堂がある建物へと日菜乃の手を引いて歩き始めた。
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