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「明日でナオキとお別れだから、今はっきりさせておきたいの。この子にちゃんとナオキとお別れをさせたいのよ。すぐにまた会えるなんて思いながら中途半端にお別れしたら、この子はあとで絶対に後悔するから」
ママは泣いていた。
「だって、私は絶対にあなたを死なせないからね。そんなことをして、ナオキが喜ぶと思うの?」
「ナオキがいなきゃ、生きていけないもの」
私は泣き崩れた。
「赤ちゃんがいるじゃない。ナオキとの赤ちゃんが生まれるんじゃない」
「ナオキがいないのに、育てていく自信がない」
「私たちだっているじゃない」
「ナオキがいないのに、生きていても仕方ない。ナオキ、ナオキ……」
私はナオキが亡くなった日以来初めて取り乱して、棺の中のナオキに縋った。
美智香ママと静香さんが、両側から私の肩を優しく抱いてくれていた。
その時コホンと咳がして、「お取り込み中の所、申し訳ないが、少しいいかな」と声がした。
振り返ると、仙台中央署の熊谷さんと担当の刑事さんがドアのところに立っていた。
「報告と届け物があって来た」
熊谷さんはナオキの棺の所に来て、ナオキに向かって話し始めた。
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