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「まず、報告だ。犯人が捕まった。広瀬川の河原に潜伏していたのを確保した。ナオキの無念を少しでも晴らせるように、これから厳しく取り調べをする」
そう言うと、棺に深く頭を下げてくれた。
それから熊谷さんは側に座っている私に向き合うと、警察署の名前が入った封筒を私に差し出した。
「ナオキが事件の時に持っていた所持品だ。一応、改めて欲しい」
その言葉に、会場にいた皆が近くに集まった。
私は封筒の中の物を一つずつ取り出して、静香さんが寄せてくれたサイドテーブルに並べた。
スマホ、部屋の鍵、財布、青葉区役所の空の封筒、それに小さな古い指輪ケースのようなものだった。
部屋の鍵には、革のキーホルダーと共に、小さなこけしのキーホルダーが付いていた。昔、私が松島のお土産に買って来たものだ。色褪せてもずっと付けてくれていた。
あの時は、こんな風にナオキと結ばれて、こんな風にナオキが先に死んじゃうなんて思いもしなかった。
「ねえ、封筒の中身は空なの? おかしいわね。ナオキ、事件の前、うちの店に寄ったの。婚姻届の証人を私に頼みにきたの。ちょっと照れながらね」
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