53人が本棚に入れています
本棚に追加
寛大な千鶴だが、さすがに部屋で煙草を吸うと嫌な顔をする。
わざとらしくコホコホと咳をして、窓を開けて手で煙を扇ぎながら、「ここの部屋は、私が借りているんだからね……」と言うから、そこは折れて家では禁煙を守っている。
美智香ママにうっかり話したら、俺のことを昔から知っているママに大笑いされた。
「ナオキが禁煙するなんてねえ……」
とはいえ、やっぱり時々吸いたくなるから、そんな時は勾当台公園を根城にするホームレスのおっちゃんの所に行って、二人で煙草を吸う。
おっちゃんに千鶴は元気かと聞かれるので、ある時、その流れでつい、「おっちゃん、誰かが家にいる生活ってのもいいもんだな」と、漏らしてしまった。
「あ、ごめん。ホームレスのおっちゃんに言うことじゃないよな」
俺が謝ると、おっちゃんはにこにこ笑っていた。
「気にすることじゃないぞ。俺も昔はあったかい家庭を持っていたから、すごくわかるさ。それに俺は、千鶴ちゃんが幸せなのが嬉しいんだからな。いいか、そんなことより、もし千鶴ちゃんを泣かせたらただじゃおかねえぞ」
おっちゃんは、千鶴を本当の娘のように思ってくれていた。
最初のコメントを投稿しよう!