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神在島
ガタタッ。
「ん…………」
ゆったりとした渡航の最中、いきなり激しい揺れに襲われ、俺こと『廻理和彦』は目を覚ます。
波の揺れが心地よかったのか、どうやら座席で寝てしまっていたようだ。
重い目蓋を開けると、太陽に照りつけられている大海原が目には入ってきた。
数十キロ先に見えるのが目的地の『神在島』だろうか。
引っ越しを決意した時調べたが、やはり実際に目の当たりにするのとは訳が違う。
写真や動画では小さいイメージだったが、思ったより大きいように思える。
ここが俺の新天地か。
……いや、俺達の……か。
「おはよー、カズくん。 ゆっくり寝てたねー」
大海原を眺めていたらそう話しかけてきたのは、『五草音亜』。
腰まで届く茶髪に、ピアスの穴一つ無い端正な容姿。
落ち着いた印象を与えるセーターやロングスカートが似合う俺の恋人、音亜だった。
「悪い、寝ちまってたか……」
「あはは、気にしないで。 カズくんの寝顔を見てるのも楽しかったから」
言いながら音亜は恋人繋ぎをしてきた。
「それ、楽しいのか? 俺の寝顔なんて別に面白くもなんともないだろ。 イケメンでもあるまいし」
自分で言うのも悲しいものがあるが、俺は中の中くらいの顔立ち。
どこにでも居る普通の顔面偏差値だ。
見ていても退屈だと思うのだが。
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