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「撮るよー、はいチーズ」
「なあ、今更なんだけどなんでいつも掛け声がチーズなんだ? 数字の二でもよくないか?」
「はいそこ、折角のロマンティックな雰囲気を壊さない!」
パシャ。
「あー! もう、カズくんのせいだからね! 絶対変な顔で写ってるよ!」
「……まあたまには良いだろ。 ある意味、記憶には残りそうだし」
「うぬぅ……そりゃそうだけど……」
ちゃんとした写真が撮れなかったのが心残りなのか、音亜は船の手すりにもたれ掛かりながら海を見つめている。
相変わらず絵になる奴だ。
彼女の後ろに映える輝く海と照りつける太陽がよくマッチしている。
本当に俺には勿体ない女だと思う。
たまに子供っぽいところがたまに瑕だが。
いや、そこも魅力か。
いつまでも乙女心を忘れないところも、また可愛いというか。
それはそれとして。
「音亜、行くぞ。 お前だけ東京帰るのか?」
「あっ、待ってよ! 置いてかないでってば!」
スタスタと陸へと繋がる桟橋を歩いていると、音亜が追いかけて……
「よっし! いっちばーん!」
きたと思ったら、抜かして我先にと陸へ降り立った。
子供かな。
コンクリートを踏みしめる音亜は満面の笑みで、こちらにVサインを送っている。
「へへ、カズくんってば先に行った癖に遅いなぁ! 初上陸は私が貰っちゃったよ!」
「未開の島じゃないんだが。 ていうか他に降りてた人居たし、一番乗りじゃないんじゃ……」
「こまかっ! 細かいよ、私の彼氏さん! でもそうやってツッコミ入れてくれるとこも好き!」
恥ずかしいからやめなさい。
ほら、島の住人っぽいご老人の方々が微笑ましそうに見てるから。
「あらあら、仲良いわねぇ。 ご夫婦さんかしらねぇ」
「やだもうおばあちゃん、夫婦だなんて! やっぱりそう見えちゃう? 仕方ないよね、私とカズくんは世界一のラブラブカップルだからね!」
「そうかいそうかい、よかったねぇ」
既に一コミュニティ築いてやがる。
流石の社交性だわ、うちの彼女さん。
俺をダシにするのはいささか腑に落ちない部分もあるが。
と、自慢の彼女に微笑みながら、俺も陸に降りる。
その時だった。
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