内に秘めた何か

1/15
9人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
瑠花(るか)ちゃんって、何か庇護欲を掻き立てるよな。守ってあげたくなる……」  拓也(たくや)にそう言われた瑠花は、瞬時にあることを封印すると決めた。  大丈夫。多分気付いていないはずだ。 「瑠花です」と名乗った後は、三人の会話に笑顔で相槌を打ちながら、せっせと鍋に具材を放り込んでいただけだ。 「じゃあ守ってほしいなぁ……なんてね」  瑠花は手を止めてそう返すと、笑顔を弾ませた。  拓也に一目惚れだった。  親友の小雪(こゆき)と、その向かいに座る小雪の彼氏の大輔(だいすけ)、その横に座る大輔の親友の拓也というメンバーで、小雪の家で鍋を囲んでいた。 「それって、私が小さいからですかぁ?」  身長150センチの瑠花は、少し唇を尖らせて聞いた。 「まぁそれもあるかもしんねぇけど、何かふんわりした雰囲気とか、今みたいな、おっとりした話し方とか……」  やっぱり、と瑠花は思った。  男はどうして小さくてふんわりでおっとりに弱いのだろうか、と。  ふと隣に目を遣ると、小雪がにやにやしていた。小雪は事情を知っている……かどうかはわからないが、今の瑠花の話し口調を聞いて、きっと勘付いたはずだ。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!