満月と赤い薔薇

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ずーっと『星の王子様』に憧れていた だから僕は薔薇の研究者になったんだ 長い歳月をかけ 品種改良を繰り返し とうとう 僕と会話することができる 愛らしい薔薇を育てることに成功した 去年の秋 薔薇の冬囲いをしていたら その薔薇の(つる)はとても寂しそうだった それで僕は冬の間 薔薇に話しかけた あたたかくなれば君はまた新しい葉と 新しい蔓を伸ばして新しい蕾をつける やがて蕾は膨らんで美しい花を開くよ 冬は楽しい夢を見るための季節なんだ 長い眠りの中で未来の夢をあたためて 春には希望に満ちた緑のベールを纏い 僕といっしょに幸せの風に吹かれよう それまで僕は君のそばにいて君を守る だから安心して君の好きな夢に酔って
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