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「まずはあなたが最も望むレイフくんの件から。商会への調査や北部への捜索の結果、やはりダヌヴェ人の仕業と断じます。というのも我々は海に出られないのに対し、彼らは島に上がれます。どこを探してもいないともなれば彼らくらいしか思い当たりません。そして彼を浚ったオオカミというのも、ダヌヴェ人が遣わした悪鬼と考えるのが妥当でしょう」
「妖精や精霊とやらは島の外にもいる?」
「ええ。妖精はともかく精霊の数は大陸はわずかなものですがね」
ホルスロンドと他では精霊の由来が違うのか。あるいは環境か。いや、それもまた重要ではない。
それよりもあまりの不安で肉が通らなかった。しかたなく手前にあった茶で流しこんだが、勢いよく飲んだせいで噎せてしまう。
クリンショーは水の入ったグラスを差し出し、わたしはゆっくりと、しかし大きく息をしながら、少しずつそれを飲んだ。
大理石の上を滑り落ちるような喉越しは、泥臭い故郷の水とは別物である。水を味わいつつ、クリンショーと異国情緒な内装を観察する。そしてある仮説を得たところで、呼吸を整えて質問を続けた。
「クリンショーさんは、島の外の人ですよね」
あまりに唐突且つ率直な質問だっただろう。
クリンショーは笑みを浮かべたまま固まった。やがて口端が震え、表情を繕おうとして──結局諦めた。
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