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俯いて唇をかみ締める。
「それで?」
空也が顎を掴んで上を向かせる。
「えっと……ロイ君に『空也は優しいから』って、『セックスフレンドなんだろう』って言われて……それに見合いをしたって聞いて。本当ですか?」
「ロイに聞いたのか?」
「はい。相手の家にも行ったって聞きました。結婚するんですか?」
空也が大きくため息を付いた。
「お前は俺に信用がないんだな」
ズキッと胸が痛む。
「俺は言わなかったか、『愛してる』と」
覚えてる。
一度だけ……。
告白して、初めて抱かれたあの時。見つめ合って、身体を貫かれたあの時。
忘れるはずがない。
涙が止まらなくなるほど嬉しくて……。
「覚えています」
でも、それから一度も言ってはくれない。
「ならなんで、結婚すると思うんだ」
「だって……見合い……したのでしょう?」
その上相手の実家に行ったと聞けば結婚するんじゃないかって思うじゃないか。
「あれは見合いじゃない。計られたんだ。雅に呼ばれて行った先に相手がいて、俺は騙されたんだ」
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